ワークルール検定
中級テキスト
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著者:道幸哲也(北海道大学名誉教授)
加藤智章(北海道大学教授)
國武英生(小樽商科大学准教授)
開本英幸(弁護士・北海道大学客員准教授)
淺野高宏(弁護士・北海学園大学准教授)
ワークルールを身近なものにするために
2007年11月、北海道に「職場の権利教育ネットワーク」というNPO法人が発足しました。その設立趣旨は、「職場において権利が守られるということは『働くこと』の前提であり、営々と築き上げられてきた『文化』に他ならないからである。また、生きる力は、職業能力だけではなく、権利主張をする知識と気構えをも含むものと思われる」というものです。当NPOは、ワークルール教育を実現し、支援するため、学校におけるワークルール教育のために専門家を派遣すること、ワークルール教育や労働教育のための資料やテキストを作成すること、ワークルール教育の担い手の教育・研修を行なうことなどに取り組んできました。
ワークルール検定は、ワークルールをより身近なものとする試みとして、2013年6月に札幌で初級プレ検定を、11月には北海道内4カ所と東京で初級本検定を実施しました。2014年6月には道内4カ所および東京、大阪、福岡で初級検定を、さらに札幌と東京では初めての中級検定も行ないます。
検定を取り入れた理由とそのメリット
ワークルールの知識を獲得する方法として検定制度を取り入れた理由として、4つの点をあげることができます。
?だれでも興味をもちやすく、検定好き、クイズ好きの国民性にフィットしていると考えたからです。検定は自分の知識を社会的に確認するシステムであるとともにいつでも誰でもチャレンジできる点にも着目しました。
?効果的に知識を獲得できる手段だからです。特に、学習→研修→検定と連動することによって知識を効果的に得ることができますし、理解もより深くなります。とりわけ、自己採点することによって理解の程度がわかり、自分なりの目標も設定できます。
?職場や家庭で気軽に議論できるからです。現実問題を議論することは難しいですが、検定についてであれば、どのような問題が出たか、正解はなにか、どこが間違っていたか、なぜ間違ったかなど、気軽に話題にできます。
?ある種の資格と連動することができるからです。検定は、知識や能力を客観化・外部化するシステムといえます。
さらに、ワークルール検定の具体的メリットとしては4点あげることもできます。
?労働者個人にとっては、自分を守る法的な知識を獲得することができ、体系的な知識を深める契機にもなります。市民レベルにおいて労働問題やワークルールへの興味を高めることができます。
?労働組合にとっては、組合内の研修と連動させることによって効果的なワークルール教育が可能となります。同時に、ワークルールをふまえた要求の集約にも有用です。
?企業にとっては、社員が共通の法的知識をもつことによってそれに基づいたコンプライアンスを促進し、無用な紛争を回避することができます。ワークルールを守っていることは採用においても人材を定着させるうえでも有利となります。
?社会的にとっては、働く際のワークルールが共通の知識・了解となれば、それに基づいた営業や生産活動が可能となります。働く者の立場も尊重する社会や文化の構築にプラスになることが期待されます。
テキストの特徴
『ワークルール検定 中級テキスト』は、ワークルールの全体像をほぼ網羅しています。実際に職場で直面すると思われる主要な論点を取り上げ、関連する裁判例をふまえてワークルールの基本的な考え方を解説しました。また、具体的なイメージをもって考えていただくため、要所に〈設例〉をおいて理解しやすくなるように工夫しました。本書では、労働法だけでなく、働く際に必要とされる社会保障法上の問題も対象としています。基本的に中級検定用のテキストとして執筆されていますが、ワークルールを本格的に学びたい人や仕事上ワークルールの知識が必要な人にとっても有益な本になっているものと確信しています。
1 労働条件決定システム
(1)総論 (2)法令 (3)労働契約、就業規則、労働協約の関係
2 就業規則
(1)就業規則とは (2)就業規則の作成・変更に関する労基法上の義務
(3)就業規則の効力 (4)労働契約の変更と就業規則
第2章 労働契約
1 労働契約
(1)労働契約の成立(2)労働契約の基本原則(3)労働契約の当事者
(4)労働条件の明示(5)労働者派遣
2 採用・内定・試用
(1)募集・職業紹介(2)採用の自由(3)採用内定(4)試用期間
3 労働契約上の権利義務
(1)労働契約の主たる権利義務(2)労働契約に付随する権利義務
(3)労働者の損害賠償義務
4 権利保障・人格的利益
(1)労働者の人権と自由の保障(2)セクシュアル・ハラスメント
(3)いじめ、パワー・ハラスメント(4)プライバシー
5 人事異動
(1)配転(2)出向・転籍(3)昇進・昇格・降格(4)休職
第3章 賃 金
1 賃金とは
(1)労契法上の賃金 (2)労基法上の賃金
2 賃金請求権の発生
(1)賃金請求権の要件(2)労務の提供は債務の本旨に従って行なう必要があること
(3)労務の不提供または不完全な提供と賃金が問題となる具体例(4)時効
3 賃金の支払い
(1)賃金支払いの4原則(2)平均賃金(3)賠償予定の禁止(4)退職時の金品返還(5)賃金の非常時払い(6)休業手当(7)付加金
4 賃金の支払形態と賃金の決定
(1)賃金の支払形態(2)年俸制(3)賃金の決定
5 割増賃金
(1)割増賃金(2)割増賃金の計算方法(3)通常の労働時間の賃金
(4)時間外込みの賃金(固定時間外手当制度の有効要件)
6 賞与
(1)賞与(2)賞与と欠勤控除(3)賞与支給条件
7 退職金
(1)退職金
(2)退職金の不支給は労基法24条の全額払いに違反するのか?
(3)退職金不支給・減額条項の合理的限定解釈
(4)退職後の懲戒解雇事由の発覚と退職金の返還
(5)死亡退職金
8 最低賃金
9 賃金の確保
第4章 労働時間・休日・年次有給休暇
1 労働時間
(1)労働時間とは(2)どこまでが労働時間なのか
(3)時間外・休日労働と割増賃金(4)管理監督者
(5)労働時間の適正把握管理義務(6)労働時間の算定
(7)1週40時間、1日8時間の例外
2 年次有給休暇
(1)年次有給休暇とは(2)年休権の行使(時季指定権)(3)年休自由利用の原則
(4)年休取得と不利益取扱い(5)年休権の消滅(6)計画年休
3 休暇、休業、休職
(1)総論(2)産前産後休業等(3)育児休業(4)介護休業(5)子の看護休暇
(6)休職制度
第5章 雇用終了
1 合意解約
(1)合意解約とは (2)合意解約の申入れの撤回 (3)退職勧奨
2 辞職
(1)辞職とは (2)辞職の撤回 (3)合意解約との区別
3 定年
(1)定年制とは(2)高年法の規制
4 解雇
(1)解雇とは(2)法令による解雇理由の制限(3)解雇予告制度
(4)解雇権濫用法理(5)解雇が無効である場合の処理 (6)変更解約告知
5 懲戒
(1)懲戒とは (2)懲戒権の根拠(3)懲戒の手段 (4)懲戒の事由
(5)懲戒権濫用法理 (6)懲戒解雇と普通解雇
6 有期労働契約と雇止め
(1)有期労働契約と労働契約の期間(2)無期労働契約への転換申込制度
(3)雇止めに関する判例法理の明文化(4)不合理な労働条件の禁止
7 労働契約終了後の措置
(1)退職時等の証明(2)金品の返還
8 雇用終了と雇用保険
(1)雇用保険のあらまし(2)雇用保険の適用範囲
(3)雇用保険制度の目的?……失業等給付
(4)雇用保険制度の目的?……雇用保険二事業
第6章 労働組合法
1 労働組合法の全体像
(1)組合はなぜ弱体化したか(2)集団化の仕組みと従業員代表制度
(3)集団的な労働条件決定過程
2 労働組合内部問題
(1)労働組合とは(2)組合員の権利・義務(3)組合組織の変動
(4)組合内部問題に関する課題
3 不当労働行為制度
(1)不当労働行為の類型(2)不当労働行為をめぐる総論的問題
(3)不利益取扱い(4)支配介入
4 労働委員会制度
(1)労使紛争処理システム(2)労働委員会制度の特徴
(3)労働委員会手続のアウトライン(4)救済命令
5 団体交渉権の保障
(1)団交権保障の意義(2)団交拒否紛争の類型
(3)団交紛争の処理パターン
6 労働協約
(1)協約の締結(2)協約の効力(3)個別的論点(4)一般的拘束力制度
(5)協約法制の課題
7 団体行動の正当性
(1)組合活動の正当性 (2)争議行為の正当性
第7章 社会保障・社会保険
1 社会保障制度の全体像
2 社会保険
(1)加入する保険の違い(2)被保険者資格(3)非正社員と被保険者資格
(4)被保険者資格の取得(5)被保険者資格の届出(6)保険料
3 労災保険
(1)労災保険の性格(2)業務上・外の認定(3)業務災害(4)私傷病
(5)医療保障・障害給付(6)労災民訴(7)出産手当金・育児休業給付
4 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
(1)継続雇用制度の改正(2)高年齢雇用継続給付
◇判例索引