図説 経済の論点
柴田 努(しばた・つとむ)
1980年埼玉県生まれ。岐阜大学地域科学部助教。専門は経済理論。一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位修得退学。共著に『なぜ、市場化に違和感をいだくのか?─市場の「内」と「外」のせめぎ合い』(高橋弦・竹内章郎編著、晃洋書房)、『キーワードで読む現代日本社会』(中西新太郎・蓑輪明子編著、旬報社)、論文に「成長戦略とコーポレート・ガバナンス─日本経済の構造変化と株主価値重視経営」(『唯物論研究年誌』第19号、大月書店)などがある。[はじめに、第2章10、第3章1、第3章2、第3章3]
新井大輔(あらい・だいすけ)
1979年熊本県生まれ。名城大学経済学部助教。専門は金融論、中小企業金融論。中央大学大学院商学研究科修了。博士(金融学)。共著に『現代資本主義とマルクス経済学』(高田太久吉編、新日本出版社)、共訳書にデヴィッド・ハーヴェイ『反乱する都市』(作品社)、論文に「1980年代における中小企業向け貸出とリレーションシップバンキング」(『商學論纂』第54巻第3.4合併号、中央大学商学会)などがある。[第1章5、第1章6、第2章2、第2章6、第2章11、第2章13、第2章コラム]
森原康仁(もりはら・やすひと)
1979年生まれ。三重大学人文学部准教授。専門は多国籍企業論、国際経済論。京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(経済学)。共著に『知識資本の国際政治経済学――知財・情報・ビジネスモデルのグローバルダイナミズム』(関下稔・中川涼司編、同友館)、最近の論文に「要素技術の統合コストの増大と包括的ソリューション・サービス――2000年代におけるエンタープライズIT市場の再編の検討」(『立命館国際地域研究』第39号)などがある。[第1章1、第1章2、第1章3、あとがき]
【執筆者】(50音順)
秋山道宏(沖縄国際大学非常勤講師)第3章12
池島祥文(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授)第1章13
宇山 翠(岐阜大学地域科学部助教)第3章8
小倉将志郎(静岡大学人文社会科学部准教授)第2章1、第2章3、第2章4、第2章5、
第2章7、第2章8、第2章9、第2章12、第3章11
加賀美太記(就実大学経営学部専任講師)第1章11
篠田 剛(鹿児島県立短期大学准教授)第1章9
戸室健作(山形大学人文学部准教授)第3章9、第3章コラム
永島 昂(中央大学経済学部助教)第1章8
永田 瞬(高崎経済大学経済学部准教授)第1章7、第3章7
中村真悟(大阪市立大学大学院経営学研究科特任講師)第3章13
新井田智幸(岐阜大学地域科学部助教)第3章4、第3章5、第3章10
橋口昌治(立命館大学生存学研究センター専門研究員)第1章コラム
原 民樹(一橋大学大学院博士後期課程)第1章10
真嶋麻子(津田塾大学国際関係研究所研究員)第1章12
蓑輪明子(東京慈恵会医科大学非常勤講師)第3章6
宮?崇将(追手門学院大学経営学部専任講師)第1章4
2007年に発生した世界的な金融危機によって、世界経済は深刻な影響を受けました。グローバリゼーションや金融中心の経済構造、新自由主義政策に人びとの批判が向かいましたが、いまだ多くの矛盾を抱えながら、世界経済は先行きのみえない道を進んでいます。
「安定した仕事に就けるだろうか」「病気やケガをしたときに病院へ行けるだろうか」「労働時間が長く、毎日疲れている」「雇用契約が来年は更新されないかもしれない」「失業したら住む場所がなくなってしまう」。日本社会に生きる多くの人びとはこのような不安を抱きながら、日々暮らしています。
その一方で、富裕層や大企業に富が集中し、経済格差がさらに拡大しています。グローバルに展開する大企業は利益を増やしており、株価も上昇傾向にあります。それなのに、なぜ私たちの暮らしはなかなか良くならないのでしょうか。これはだれもが答えを知りたい「問い」であると同時に、重要な「経済の論点」を多数含んでいる理論問題でもあります。
本書は、現代の日本経済や世界経済を考えるうえで欠かすことのできないテーマである「グローバル化する経済」「金融化する経済」「新自由主義と日本経済」について詳しく取り上げることで、この「問い」に答えることを目的としています。39の項目と3つのコラムで構成されていますので、通して読んで現代経済の全体像をつかむこともできますし、手早く知りたい問題をピックアップして読むこともできます。
本書がよりよい経済社会の実現に向けて、現代の経済現象を正確に読み取り、そのあるべき方向性を考えようとするすべての人びとに対して役立ててもらえれば幸いです。
編者の一人として 柴田 努
1 ひろがる企業の国際生産-グローバリゼーションの推進主体
2 「平成の開国」-貿易・投資をささえる諸制度
3 「iPodの利益」はだれのものか-グローバルな生産ネットワークの統治構造
4 その商品は手放しに喜べるものなのか-小売業のグローバルな活動
5 国際金融市場の大規模化と寡占化-金融グローバル化の二面性
6 巨額の外国為替取引の謎
7 地域経済の持続可能な発展とは-中小企業の役割
8 ものづくりの基盤が崩れる?-グローバリゼーション下の基盤技術産業
9 「消費増税しかない」は本当?-グローバル化と税の公平性
10 新興国の台頭-BRICsとNEXT11
11 貧困層を巻き込むマーケティング競争-BOPビジネスと貧困
12 貧困削減のためのグローバルなシステム-開発援助を通してみる世界
13 飢餓と飽食、矛盾あふれる世界-グローバリゼーションと食料・農業問題
コラム もう一つの労働組合、ユニオン
第2章 「金融化」する現代資本主義
1 経済の金融化とは何か
2 国際金融市場の不安定化と世界金融恐慌
3 金融の証券化は万能薬か?
4 デリバティブとは
本書を読みすすめるための金融用語
5 投機としてのデリバティブ
6 金融自由化の原動力-銀行による証券業への再進出
7 規制の民営化
8 銀行のビジネスモデルの変容
9 影の銀行システム
10 機関投資家の台頭
11 中小企業の資金繰りはなぜ厳しいのか
12 家計の債務増大
13 異次元緩和が増幅する国債市場のリスク
コラム ビットコインは国家へ
第3章 新自由主義と日本経済
1 日本経済の構造変化.
2 日本経済の“成長戦略”
3 株主価値重視の経営
4 不安定雇用の増大-非正規雇用の急増
5 正規雇用の長時間労働-使いつぶされる労働者たち
6 女性の労働-労働における男女平等は実現するか?
7 なぜ賃金が下がり続けるのか?
8 所得格差の拡大
9 労働組合とは何か
10 アベノミクスと異例の金融政策-「異次元緩和」政策の疑わしい効果と危険性
11 貯蓄から投資へ-家計の金融資産の変容
12 公共事業と日本経済-アベノミクスとオリンピックを問う
13 エネルギー問題のゆくえ-福島原発事故以降のエネルギー産業動向
コラム 地域をむしばむ貧困 都道府県別貧困率とワーキングプア率