新刊

患者よ、がんと賢く闘え!

放射線の光と闇

患者よ、がんと賢く闘え!

がん患者が年間100万人を越える時代をどう生きるのか。科学的な知識が健康を守る!

著者 西尾 正道
ジャンル ■社会・労働・法律
■社会・労働・法律 > 社会
出版年月日 2017/12/01
ISBN 9784845115181
判型・ページ数 4-6
定価 本体1,600円+税

この本に関するお問い合わせ・感想

放射線被ばく、農薬などの化学物質、遺伝子組換え食品など健康環境が悪化するなかで、がん罹患数は年間100万人を超え、原因が解明されていない指定難病も330疾患に増加している。さらに福島原発事故後には国家の愚策による“総被曝国家プロジェクト”が進行し、国民の健康問題が危惧される。今後のがん医療の課題と疑似科学的物語で放射線による健康被害を過少評価している問題に対してラディカルな思考視点を提示する。


【はじめに】より

 かつて「人生50年」と言われましたが、実際に日本人の平均寿命が50歳を超えたのは1947年です。戦後72年を迎え、女性の平均寿命は87歳を超え、男性も81歳に近づき、日本人全体としては84歳となっています。戦後の経済復興を通して、栄養状態の向上、抗生物質の使用、補液などの全身管理の医学的進歩などが長寿に寄与した大きな要因でしょう。

しかし、かつて国民病といわれた「結核」による死亡は激減しましたが、代わって「悪性新生物=がん」が今では国民病となってきました。CTが普及し、脳卒中発作が起こっても脳出血か脳梗塞かの区別ができるようになり、死亡者数は減少し、1981年に脳血管疾患を抜いてがんが死因のトップとなっています。それ以降、がんによる死亡者数は増加の一途をたどっています。世界的にも2010年にがんが世界の死亡原因の1位となりました。がんの多発は生活環境・食生活が深く関与していますが、近年では放射線被ばく、農薬などの化学物質、遺伝子組換え食品など、健康を害する可能性を秘めた環境にさらされています。

最近、ネオニコチノイド系農薬が自閉症や小児の発達障害の原因となっていることが明らかになってきましたが、発がんの原因ともなっていることも報告され、さらにうつ病や認知症にも関係しているという報告も出てきています。こうした多重複合汚染の環境悪化のなかで2016年の予測がん罹患者は101万人(男性56万300例、女性42万1800例)と予測されています。また原因が解明されていない指定難病は現在330疾患に増加しています。こうした現代人の健康問題を引きずりつつ、高騰する医療費問題や“認知症を伴う高齢者のがん治療”をどうするかなどの課題に向き合う必要が出てきています。

私は、こうした疾病構造の変化を感じながら、大学卒業後は地方の一臨床医としてがんの放射線治療に携わってきました。しかし1970年代のがん医療の現場では放射線治療は他科の医師もよく理解しておらず、手術ができない人や他に治療法がなくなった人が放射線治療に紹介されて来るのが日常でした。いわゆる「でも・しか」治療です。他に治療法がなくなったので放射線治療でもしようかとか、残されたのは放射線治療しかない症例が全道から紹介され集まってきました。

当時は放射線治療ができる施設は少なく、遠方から来院したため放射線科病棟は51床保有し、日本で最も多くの病床を満床にして進行がんや緩和目的の放射線治療をおこなっていました。また今のようにポスピス的施設も皆無でしたので、看取る患者さんも多く、年間70人も放射線科病棟で死亡した年もありました。夜中に叩き起こされて、真冬はアイスバーンを運転して病院に駆けつけることが日常茶飯事でした。

医師人生を過ごした現在の北海道がんセンターとは、札幌陸軍病院が戦後に国立札幌病院となり、1968年には北海道庁が「北海道地方がんセンター」という看板を付与したため、がん診療に力を入れる施設となりました。この1968年の初年度だけ予算がつき放射線治療機器も導入できましたが、厚生省が指定した地方がんセンターではなかったために予算も少なく、最新の医療機器の導入も遅れていました。

そのため昔から病院で保有していた密封小線源を使用した治療もおこなっていました。今ではラジウム(Ra-226)線源を使用した最後の医者です。この小線源治療は、患者さんにとって内部被ばくを利用した治療であり、放射線治療のなかで局所制御に優れた治療法ですが、術者が被ばくすることや診療報酬が低くもうからない治療のため絶滅しつつあります。

必要な放射線治療機器が購入できず、「でも・しか」治療例が多い現場の環境のなかで、日本のがん医療や問題や医療経済の仕組みや放射線治療の課題などを考え続けてきました。

本書の出版に際しては、放射線の光と闇、表と裏の世界を取り上げました。物事には裏表があります。放射線もその利用の仕方しだいでは光の面と闇の面があります。放射線の光の世界の典型的なものは、医学における画像診断であり、がんの放射線治療です。上手に使えば多くのメリットを得ることができ、リスク・ベネフィットの観点から、放射線を使用することがリスクよりもメリットがあることから使われています。医療における放射線を使った検査や治療は、過度に心配することなく、必要があれば躊躇せずに受けていただきたいと思います。

しかし、放射線の健康被害という影の世界や負の側面としては、核兵器開発や原子力政策の推進のために、科学的とはいえない内容で健康被害を過少評価し、真実が隠蔽されています。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、放射線の健康被害が憂慮されていますが、政府・行政をはじめとする為政者や原子力産業界や御用学者化した専門家とか有識者という人たちがあまりにも無責任な「放痴対策」をおこなっていることから、放射線の闇の世界を根本的に考えていただきたく、光の世界と比較してまとめることとしました。

原子力発電は、コスト・ベネフィットの観点から稼働中の費用だけを他のエネルギーと比較して割安だと宣伝し、原子力政策を進めてきましたが、福島原発事故でまったく嘘であることが明らかになりました。使用済み核燃料棒の処理も決まらず、廃炉費用も計算に入れず、事故を起こせば試算不能なほどの対策費が必要となることなど、国民にまったく知らせることなく、原発を普及してきたのが日本です。政治的には原発稼働によりプルトニウムなどを保管し、潜在的核保有国としての立場を堅持したいと考えているのかもしれません。しかし、原発は事故を起こさなくても、稼働や再処理する過程で大量のトリチウムを放出することから、健康被害をもたらすことも知られています。何よりも、発電技術は他にも代替手段があります。しかし、核兵器開発や原発を稼働するために、放射線の健康被害という闇の世界は明らかにせず、科学的とは言えない理屈で国民をだまし続けています。本書は、医学における放射線の利用と比較しつつ放射線の闇の世界の問題点を明確にすることも目的の一つとしています。がんが国民病ともいえるような時代となり、自分の命をどう守るかを考える一助となればと思います。

20世紀の後半から、人類は放射線との闘いの時代に生きることとなりました。しかし、科学性をもった正しい知識で放射線を利用することが重要なのです。

第Ⅰ部 放射線の光の世界を求めて―がんと賢く闘う
第1章 放射線科医としての歩み
第2章 納得のいくがん治療をめざして
第3章 患者よ、がんと賢く闘え
第4章 患者会活動としての政策提言
第5章 医療改革の方向性

第Ⅱ部 放射線の闇の世界を考える―核汚染の時代を生きる
第1章 福島原発災害を考える
第2章 低線量放射線被ばく―福島の子供の甲状腺を含む健康影響について
第3章 鼻血論争を通じて考える
第4章 原発事故による甲状腺がんの問題についての考察
第5章 原発稼働による健康被害について―トリチウムの問題
第6章 一億総がん罹患社会への道

第Ⅲ部 日本の医療と健康問題を考える
第1章 崩壊する社会保障制度
第2章 科学・医学の光と影
第3章 子宮頸がんワクチン問題を考える―予防接種より検診を!
第4章 がん検診を考える―なぜ、いま、健診か
第5章 これでいいのか! 日本のがん登録
第6章 TPPがもたらす医療崩壊と日本人の健康問題

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