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『壁を壊す[新装版]非正規労働者を仲間に』が『社会政策』の書評で紹介されました。
2020.12.22
壁を壊す〈新装版〉
非正規を仲間に(連合・労働組合必携シリーズ①)
職場を代表できない(しない)労働組合に未来はあるか?
“非正規労働者を組合に「入れてあげた」のではなく、彼らに組合に「入ってもらった」のだ。”
労働組合の原点に立ち返り、非正規の組織化に取り組んだ10組合の事例。
新装版にあたって
いわゆる非正規労働者の組織化はこの10年間で著しく進んだ。パートタイム労働者の組合員数は平成20年の61万人から平成29年の120万人へと倍増した。年率7.8%の増加である。日本の企業別組合もよくやっていると私は思う。もっともパートタイム労働者の推定組織率は7.9%だから、まだまだ先は長い。
平成24年の労働契約法改正で追加された「通算5年超で無期転換」(第18条)、「反復更新に対する雇い止め法理の条文化」(第19条)、「有期契約と無期契約との不合理な労働条件の相違の禁止」(第20条)は非正規労働者の処遇改善と雇用保障に大きく寄与することになると思う。無期転換対象者は今年から出現することになる。正規従業者からなる企業別組合はこの事態にどう対応しようとしているのだろうか。
私が本書で指摘している二つの危機、集団的発言メカニズムの危機と代表性のゆらぎがよりはっきりと見えてくるようになるのではないか。非正規労働者に蚕食された職場をユニオン・リーダーは傍観しているだけではいけない。非正規労働者に声をかけ「仲間になってもらう」必要がある。「仲間にしてあげる」では危機は乗り越えられない。二つの危機の意味そこからの脱出方法を、非正規を組織化した先駆的なユニオン・リーダーの苦闘から学んでほしい。本書は先駆者とみなさんの橋渡しをするにすぎない。
本書が想定している読者層はもちろん労働組合運動を担っているリーダー、中堅層である。だが実践家だけではなく、労働組合の研究者とりわけ若手の研究者にも本書を手に取ってほしいと思う。本書のもとになったのは『「非正規労働者の組織化」調査報告書』(連合総合生活開発研究所、2009年)である。この報告書に描かれた十の事例から帰納的に仮説を抽出した成果が本書である。事例から帰納的に仮説を創造する困難さと面白さを経験してほしい。丹念な事例研究の良さが忘れ去られ、定量的データを活用し、見栄えはよいが中味は空疎な研究が目に付くようになった今日この頃だからこそ、そう強く願うのである。
第二章 危機の察知
一 集団の浸食
二 経営の先行きに対する不安
三 職場の混乱、停滞
四 代表性の揺らぎ
五 まとめ
第三章 異論と説得
一 二つに分かれる反応
二 順調なケース
三 異論が出たケース
四 まとめ
第四章 組織化の実際
一 準備段階
二 実践
三 説得
四 まとめ
第五章 壁の崩壊
一 成果
二 組合活性化
三 壁を壊す