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『労働運動を切り拓く』の書評がジェンダー研究No.22に掲載されました。
2019.10.10
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2019.03.15
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2019.01.23
労働運動を切り拓く
女性たちによる闘いの軌跡
均等法制定をめぐる攻防とは何だったのか
差別のない働き方と「生活」を取り戻す
その純粋な熱意に貫かれた道のりを12人が語る
◆「はじめに」より一部掲載
労働運動史にはさまざまなものがあるが、そこには、ほとんど女性が登場せず、
個人として名前を残している人々の圧倒的多数は男性である。
女性の運動や闘争が歴史のなかに登場することもあるが、それらはごく部分的にすぎない。
理由は簡単で、労働組合の指導者の多くが男性だったからである。
しかし、近代日本の発展を支えた産業には、多くの女性労働者がおり、
戦後に組織化された労働組合や労働争議にも、女性たちはたしかに存在していた。
それだけではない。女性労働者たちの闘いは、人権のための純粋な熱意に貫かれたものが多く、
これらの事実と経験を歴史に埋もれさせてはならないと、強く思うからである。
さらに、労働運動の発展にとっても、女性の運動や闘争の理解を深めることは、今や、不可欠である。
職場代表として、すべての組合員のために力を尽くすことが労働組合の役割だからという理由もあるが、
そればかりではない。
周知のとおり、労働組合の推定組織率は1975年以降、下がり続けており、
労働組合員の絶対数も、1994年以降、減り続けている。
労働組合は、日本だけではなく、全世界的にも「縮みはじめている」のだろう。
しかし一方、労働組合を必要とする人たちは急速に増えている。
女性たち、非正規の人たち、外国人たち、差別を受けている人たち。
じつは、今ほど労働組合の力が望まれている時代はない、ともいえるだろう。
格差社会といわれて久しい今日の日本では、労働組合にこそ、
労働者生活の向上と社会の民主化を先導する役割が期待されているのではないだろうか。
そのためにも、組合運動に携わる人々には、ぜひ本書を読んでいただきたい。
【訂正情報】
『労働運動を切り拓く―女性たちによる闘いの軌跡』において、引用符・頁数に不適切な引用個所がありました。原著者の山田和代先生には深くお詫びするとともに、訂正いたします。
◆本書46頁後ろ3行目から47頁5行目までを以下のように訂正いたします。
非正規労働者の圧倒的多数は女性である。「女性労働者はこれまで企業内だけの存在であったわけではなく、企業という組織やユニットから排除を受けつつも、共有する社会的課題の解決を掲げて企業単位とは別の場でも運動を続け、つながりを拡げようとしてきた」(山田二〇一一:二七九)。女性労働者と労働組合の関係を「貧困なる関係」という山田和代は、男性を標準とした雇用制度の下では、性差別的処遇格差が避けられず、企業別組合はジェンダー化した組織となり、企業別組合中心の運動展開はどうしても女性差別に対する取組みが手薄となる、と批判し(同:二五五)、その「貧困なる関係」を解消する転換の軸は、企業外のグループと接点を結びながら、これまで労働者を隔ててきた壁を壊し、変革のための扉を開けることであると言う(同:二七九)。そのための苦闘の数々を、私たちが本書で聞き取りをした女性たちの実践に見出すことができる。
第1章 労働組合運動と女性の要求―「敵対」から「共存」へ…………浅倉むつ子
1 はじめに―「二つの敵対者」
2 男女差別に気づく
3 雇用平等法を求めて―女性たちの連帯と共闘の経験
4 雇用平等法と均等法の落差
5 一般女性保護規定廃止をめぐる苦悩
6 「男女共通規制」という方針―男女ともに人間らしい労働と生活を
7 私たちの手に「生活」を取り戻そう
8 おわりに―労働運動の未来を描く夢
第2章 高度成長期からオイルショックへ―[聞き書き]男女雇用平等法を求めて①…………萩原久美子
生きることと地続きの労働運動とともに―元ゼンセン同盟婦人局長 多田とよ子さん
交渉の主体になる、運動を編み上げる―元連合副事務局長 松本惟子さん
労働運動のプロとして生きる―元連合総合女性局長 高島順子さん
均等法制定の経過とこれからの課題―フォーラム「女性と労働21」代表 山野和子さん
第3章 男女雇用平等に立ちはだかった「保護と平等論」…………神尾真知子
1 はじめに
2 一九八五年以前の労働組合運動はどのように「母性保護」を闘ったのか
3 「保護と平等論」で何が議論されたのか
4 「保護と平等論」は、男女雇用平等を論じるうえで不可欠な議論だったのか
5 女性に対する保護のあり方
6 おわりに
第4章 経済大国ニッポンと労働運動再編の時代―[聞き書き]男女雇用平等法を求めて②点………萩原久美子
協約の積み上げが開く男女雇用平等―元全電通中央執行委員 坂本チエ子さん
調査で対抗する、運動をつくる―元総評オルグ 伍賀偕子さん
深夜業解禁、郵政職場の男女平等に挑む―元全逓中央執行委員 長谷川裕子さん
製造現場・その女性労働の原点から―元連合副事務局長 熊﨑清子さん
第5章 過去の運動を次の世代へ―歴史がつなぐ未来へのバトン…………井上久美枝
1 労働組合と女性
2 「連合 男女平等参画推進計画」第1次から第4次までの変遷
3 今後の課題
第6章 ポスト均等法の労働世界と運動の広がり―[聞き書き]男女雇用平等法を求めて③…………萩原久美子
均等法を信じた―沖縄バス三五歳定年制訴訟原告 城間佐智子さん
私たちが求めた男女雇用平等法―行動する女たちの会 高木澄子さん
労働組合は差別とたたかう―全石油昭和シェル労組 柚木康子さん
誰をも犠牲にしない平等を―全国ユニオン元会長 鴨 桃代さん
◇聞き書き・主要参考文献とデータ収集・原稿作成作業について
コラム
①婦人から女性へ
②定年制等をめぐる裁判例
③労働組合の組織について
④暫定的特別措置
⑤CEDAWによる審査
⑥ナショナルセンターの変遷
⑦男女共同参画と男女平等
⑧男女賃金差別をめぐる判例動向
⑨間接差別について
資料
①国際婦人年日本大会決議(1975年11月22日)
②総評大阪地評婦人協議会「「男女平等問題専門家会議」報告に対する見解」(1982年6月)
③私たちの男女雇用平等法をつくる会「有効な男女雇用平等法の必要条件」(1983年2月)
④経済同友会「「男女雇用平等法」(仮称)に対する考え方」(1984年3月16日)
⑤婦人少年問題審議会婦人労働部会労働者側委員「雇用における男女の機会の均等及び待遇の平等の確保のための法的整備に関する建議」に対する労働者側委員の見解(1984年3月)
⑥労働四団体および全民労協代表・労働大臣に対する申入書」(1984年4月5日)
⑦日経連(日本経営者団体連盟)「女子労働問題への対応―男女雇用機会均等法の制定まで」(1998年)
主なできごと(関連略年表)
おわりに…………連合総合生活開発研究所