日本とアジアをつなぐ (法整備支援のすすめ)

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鮎京正訓

四六並製/160頁
定価 本体1,400円+税
発行日 2017年7月27日
ISBN 9784845115099 C0036

途上国の開発援助に参加したい! と思っているあなたへ。
法の分野の国際協力を通じてアジアの国々、人々と向き合ってみませんか。
政府機関の一員として、NPOで、個人として、大学を通じて…かかわり方はさまざまです。

著者紹介

鮎京正訓(あいきょう まさのり)
愛知県公立大学法人(愛知県立大学、愛知県立芸術大学)理事長、名古屋大学名誉教授。1950年、愛知県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院法学研究科博士課程満期退学、名古屋大学法学部助手、講師、岡山大学教養部助教授、名古屋大学大学院国際開発研究科教授、大学院法学研究科教授、法政国際教育協力研究センター長、大学院法学研究科長・法学部長、理事・副総長を経て、2015年より現職。専門、ベトナム憲法史・アジア法。博士(法学)(名古屋大学)。主な編著書に、『ベトナム憲法史』(日本評論社、1993年)、『法整備支援とは何か』(名古屋大学出版会、2011年)、『アジア法ガイドブック』(編著、名古屋大学出版会、2009年)など。

「はじめに」より

「これまでは、医学部に入学し、将来は〝国境なき医師団〟のメンバーになって途上国の開発援助に参加したいと思っていたのですが、先生の講義を聞いて、法学部に入学しても開発援助に携われることが理解できました。とても、うれしかったです。」
 愛知県が主催した高校生向けの夏期公開講座で、私が「アジア法整備支援と大学」というテーマで話したときのことでした。講義を終えた後、岡崎高校の女子生徒が、私にその感想を伝えに来てくれたのですが、教師冥利に尽きるというのでしょうか、私も講義のし甲斐があって、うれしかったことを印象深く覚えています。
 私は、自分の出身高校である名古屋の私立東海高校が五月三日の憲法記念日に主催する「内閣総理大臣賞・文部科学大臣賞・椎尾弁匡杯争奪全国高等学校弁論大会」の審査委員長を長く担当しています。なぜかというと、私が東海高校弁論部のOBであり、また、弁論という行為が大好きだからです。弁論部時代には、若者が流行を追いかけることによって横並びになっていく精神構造を取り上げた「現代の流行と高校生の生活意識」という演題や、日本国憲法第九条にかかわる恵庭事件判決などをテーマに取り上げた「軍靴の高鳴り」という演題などで、全国の弁論大会に出場しました。弁論大会は、私の青春そのものであった、と言っても大げさではありません。
 ところで、高校生の弁論の演題をみると、近年とても顕著な特徴があります。大きく分けると、一つは、「開発途上国」、「援助」、「地球温暖化」など、広く「貧困」や「環境」などにかかわるテーマにきわめて強い関心もっていることです。もう一つは、「国を守る」とか、「憲法改正」、「日本の伝統」など、一見すると保守的な主張も目立ちます。この二つの傾向は、「グローバル化」や「国際化」が否応もなく進展していくなかで、高校生が〝自分はこれからどのように生きていったらよいのだろうか〟と真摯な問いかけをしていることの明確な表れであり、私は高校生の弁論を聞くたびに深い感銘を受けています。
 この「グローバル化」、「国際化」というファクターは、法律学に対しても大きなインパクトを与えています。法律学という学問は、元来、日本や韓国やフランスなどなど各々の主権国家の内部的なルールのあり方を対象とする学問でした。とはいっても国際法は国際的な法的ルールを扱う学問ですが、民法や刑法などの実定法は基本的に主権国家内部での話でした。もちろん、日本の法律学者は外国の理論や立法や判例を勤勉に学んできたのですが、それは第一義的には、日本国内の理論、立法、判決に役立てるための作業でした。
ですから、裁判官はもちろん、検察官や弁護士たち日本の法曹が、アジアの途上国に、しかも二年、三年と長期間にわたり派遣されるなどということは、これまではおよそ考えられないことでした。しかし、日本政府がアジア諸国に対する法整備支援を開始した二〇年ほど前から、日本の法曹の途上国へのかかわり方は劇的に変化することとなったのです。
 本書は、このような途上国支援に取り組む法曹がなぜ生みだされてきたのか、また、大学法学部はアジアの途上国にどのように向き合うのか、さらに、新しい時代の「国際的な法曹」とはどのような能力をもった人々なのか、を考えていきたいと思います。
 このようなテーマを若い世代に伝えることにより、広く法学を学ぶということの意味を知っていただけるならば、そしてさらに言えば、若い世代が法の分野でどのようにアジアと向き合っていくかについて、何らかの知見を与えることができれば、と考えています。
 「法整備支援」とは言っても、私はベトナム法を専門としていますので、話題の中心はアジアの国々、とりわけベトナムとなりますし、また、専門が憲法学なので、どうしても憲法についての話題が多くなることをあらかじめお断りしておきたいと思います。
これらのアジア諸国に対する法整備支援をつうじて、法における国際協力の現場を知ってもらえれば幸いです。

主な目次

はじめに
序章 法整備支援をつうじてアジアにかかわるということ
1 かかわり方は多様
   政府による支援
   NPO独自の取り組み
   学生が個人として
   異彩を放つ大学の法教育支援
2 なぜ法整備支援にかかわるようになったのか
   アジアへの関心
   社会派弁論部へ
   末川博著『彼の歩んだ道』の影響
   ベトナム戦争への関心からベトナム法研究へ
   現実の法律問題にかかわる
   そして法整備支援へ
   「雨ニモマケズ……」
第一章 アジア開発途上国の法律家たちとの出会い
1 社会主義的法治国家の国―ベトナム
2 法律家がいなくなった国―カンボジア
3 伝統的な社会主義の国―ラオス
4 軍政から民政への国―ミャンマー
5 ソ連から独立した国―ウズベキスタン
6 一九二四年から社会主義だった国―モンゴル
第二章 アジアの国々の法はどのような構造をもっているか
1 日本におけるアジア諸国の法制度研究
   日本の法制度はどのように形成されてきたのか
   アジア法への関心の低さと戦争目的の法研究
   戦後のアジア法研究とアジア経済研究所
2 体制転換と法―法整備支援は、ここから始まった
3 ベトナムの社会と法
   律令制の導入と伝統法―中国法の影響
   植民地法の刻印
   社会主義法と「適法性」
   市場経済化・対外開放政策と法
第三章 「社会主義法」という法制度をどのように学ぶか
1 憲法学とベトナム法研究―主権と人権をめぐって
2 日本の社会主義法研究者たち―学び方
第四章 法整備支援にかかわるための力をつける
1 勉強の仕方
   その国の言葉を学ぶ
   憲法を翻訳してみる
   歴史や政治に関する本を読む
   日本や欧米の法律学の成果を可能な限り詳細に理解する
2 かかわり方
   実施する側と受ける側
   第三世代の若者たちへ
   人権問題の難しさ
   さまざまな国との連帯

おわりに―自分の頭で考えて法整備支援に取り組もう

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