虚像の抑止力 (沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸)

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新外交イニシアティブ 編

四六判並製/196頁
定価 本体1,400円+税
発行日 2014年8月 7日
ISBN 9784845113606 C0031

集団的自衛権の行使容認、辺野古移設の強行着工…… 日米外交の歪みを象徴する“沖縄米軍基地問題” 外交・防衛・安全保障の専門的見地から政策の「あるべき姿」を発信! 【執筆陣】柳澤協二、屋良朝博、半田 滋、マイク・モチヅキ、猿田佐世の各氏。11月13日衆議院第一議員会館にて出版記念シンポジウム開催!!

著者紹介

新外交イニシアティブ(New Diplomacy Initiative / ND)
NDは、これまで外交に反映されてこなかった声を外交に届けるため、国内はもとより、各国政府、議会、メディアなどへ直接働きかける「新しい外交」を推進するシンクタンクとして、2013年8月に設立。設立前より、沖縄を初めとする日本の国会議員等の訪米行動を企画・実施し、2012年2月および2014年5月の、二度の名護市長の訪米行動のコーディネートを担当(名護市は2013年、NDに団体会員として加入)。

柳澤協二(やなぎさわ・きょうじ) [新外交イニシアティブ理事]
1946年東京都生まれ。70年東京大学法学部卒業後、防衛庁入庁、運用局長、人事教育局長、官房長、防衛研究所長を歴任。2004年から09年まで、小泉・安倍・福田・麻生政権のもとで内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当。現在、NPO国際地政学研究所理事長。著書に『改憲と国防』(共著、旬報社)、『亡国の安保政策』『検証 官邸のイラク戦争』(以上、岩波書店)、『抑止力を問う』(共著、かもがわ出版)。

屋良朝博(やら・ともひろ)
1962年沖縄県生まれ。フィリピン大学を卒業後、沖縄タイムス社入社。92年から基地問題担当、東京支社を経て、論説委員、社会部長などを務めた。2006年の米軍再編を取材するため、07年から1年間、ハワイ大学内の東西センターで客員研究員として在籍。2012年6月に退社。現在、フリーランスライター。著書に『改憲と国防』(共著)『誤解だらけの沖縄・米軍基地』(以上、旬報社)『砂上の同盟』(沖縄タイムス社)など。

半田 滋(はんだ・しげる)
1955年栃木県生まれ。下野新聞社を経て、91年中日新聞社入社。東京新聞編集局社会部記者を経て、2007年8月より編集委員、11年1月より論説委員兼務。93年防衛庁防衛研究所特別課程修了。92年より防衛庁取材を担当。2004年、中国が東シナ海の日中中間線付近に建設を開始した春暁ガス田郡をスクープした。07年、東京新聞・中日新聞連載の「新防人考」で第13回平和・協同ジャーナリズム基金賞(大賞)を受賞。著書に『Q&Aまるわかり集団的自衛権』『改憲と国防』(共著)『ドキュメント防衛融解』(以上、旬報社)、『日本は戦争をするのか』(岩波新書)、『集団的自衛権のトリックと安倍改憲』(高文研)、『自衛隊 vs. 北朝鮮』(新潮新書)ほか。

マイク・モチヅキ [新外交イニシアティブ理事]
1950年石川県生まれ。米国テキサス州で育つ。ジョージ・ワシントン大学教授。ハーバード大学にて博士号取得。専門は日本政治および外交政策、日米関係、東アジア安全保障。南カリフォルニア大学およびイェール大学で教鞭をとり、ブルッキングス研究所シニア・フェロー、ランド研究所アジア太平洋政策センター共同部長などを歴任。99年より、ジョージ・ワシントン大学エリオットスクール(国際関係学)のAsian Studies(アジア学)のためのガストン・シガール記念センター・日米関係教授。現在はエリオットスクールの副学長、シガール記念センターの研究プロジェクト“Rising Powers Initiative”の共同責任者も務める。

猿田佐世(さるた・さよ) [新外交イニシアティブ事務局長]
1977年愛知県生まれ。東京都で育つ。2002年日本にて弁護士登録、08年コロンビア大学ロースクールにて法学修士号取得。09年米国ニューヨーク州弁護士登録。12年アメリカン大学国際関係学部にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。自らワシントンにてロビーイングを行う他、沖縄・日本の国会議員・地方議会議員、各団体等の訪米行動を企画・実施。大学学部時代から現在までアムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等の国際人権団体で活動。著書に『国際人権法実践ハンドブック』(共著、現代人文社)、『夢がもてない─日本における社会的養護下の子どもたち』(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)。

「はじめに」より

 日米外交の多くの歪みを象徴的に表すのが沖縄の米軍基地問題である。「世界一危険な基地」とまでよばれながら、米海兵隊の普天間基地の閉鎖はこの18年間まったく進展していない。「基地閉鎖問題」から「基地移設問題」に姿を変えてしまったこの問題で、移設先とされた名護市辺野古の新基地建設現場では、地元の人々が10年以上も座り込みを続けて反対している。2009年には普天間基地の県外移設を求めた鳩山政権が誕生したが、この「日米関係に刺さるトゲ」を新しい方法で抜こうとして早々に退陣に追い込まれた。
 私は、この鳩山政権と普天間基地を巡る一連の出来事を米首都ワシントンで体験するという貴重な機会に恵まれたが、従来から日米外交に関与してきた多くの日本人は「嵐よ、早く去ってくれ」との対応に終始していた。むしろ、米側で、代表的な「知日派」を含め多くの人々がさまざまな意見を展開していることが新鮮だった。

 「本当はだれもが基地には反対なんだよ」
 沖縄でよく聞く声である。建築業者や基地で働く人々などが現時点で県内移設に賛成票を投じることがあっても、100年、200年後の沖縄の将来を考えたときに、基地に埋もれる現在の沖縄のままで良いと思う人はどれだけいるのだろうか。現在の日米外交は、「あるべき姿」を追求する選択肢を認めない状況で、当事者を抜きに進められている。
 2013年末の仲井真弘多沖縄県知事による「辺野古沖の埋め立て承認」により本格的に動き出した辺野古移設であるが、今なお実際に、県民の反対は根強い。県知事の承認直後、「公約違反」として県議会で知事の辞任要求決議が可決され、2014年1月に行われた名護市長選挙で移設反対を掲げた稲嶺進氏が再選した。今年5月の県民世論調査でも74パーセントが辺野古移設に反対との結果である。それにも関わらず日本政府は、名護市長の再選直後から移設に向けた調査や設計等の業務の入札手続きを進めてきた。沖縄防衛局は6月30日、沖縄県に工事着手届出書を提出し、建設事業が本格化しようとしている。この7月にも、埋め立て工事に向けた海上ボーリング調査を開始する方針だという。地元や大多数の県民の反対を押し切ってまで、移設を進める理由はどこにあるのか。
 この間、名護市長を始め、沖縄の声を米国に運ぶ活動をサポートしてきた。ワシントンでこの問題を語るときには、人権や環境、民主主義といった視点から訴えることも重要である。しかし、ワシントンに声を届けるには、ワシントンの人々と同じ言葉で話す必要がある。そのためには安全保障の知識が決定的に意味をもつ。米政府は安全保障上の担保がない限り、現行案と異なる案は選択しない。また、日本政府は一貫して「沖縄に海兵隊が存在することが抑止力になる」と主張してきた。
 「抑止力」で説明されてきた沖縄の米海兵隊の存在を、安全保障の観点から読み解いたのが本書である。海兵隊の軍事的な役割に鑑みるに、在沖海兵隊は本当に「抑止力」とみなせるのか。
 また、「抑止力」は、その一言ですべてが説明できるかのように、多くの場面で用いられる。この7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定の場面でも、安倍首相は何度も「抑止力」による説明を繰り返した。このような「抑止力」の説明やその意味についても、本書では疑問を投げかけている。

 防衛庁官房長を務め、小泉・安倍・福田・麻生政権において内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当した新外交イニシアティブ(ND)理事の柳澤協二氏は、普天間基地問題の迷走が、県民にとって最優先にされるべき基地の危険性除去から「移設なければ返還なし」という政治問題にすり替えられることで起きていると指摘する。また、この膠着状態を、日本の民主主義の根幹につながる問題として捉え、問題提起を行う。
 次に沖縄タイムス論説委員を務め、その後フリージャーナリストとして在沖米軍基地問題の取材を続けている屋良朝博氏は、沖縄駐留の海兵隊が実際にどのような役割を担い、運用されているかを具体的に紹介することで、抑止力言説に疑義を唱える。米国の安全保障政策が変容するなかで、事実にそくした「日米同盟のかたち」と沖縄からの海兵隊撤退の方途をさぐる。
 また、東京新聞の論説兼編集委員として、長年にわたり防衛省、自衛隊の取材を続ける半田滋氏は、日本の基地政策が、米国の安全保障政策を「絶対視」するなかで成立していることを明らかにする。とりわけ沖縄はつねに日米安保体制のスケープゴートにされ続けたこと、安倍政権が進める日米同盟の強化も同様に、沖縄を「踏み台」にしたものとなっていることを指摘する。
 ジョージ・ワシントン大学教授であり、日本政治および外交政策、日米関係、東アジア安全保障を専門に研究するND理事のマイク・モチヅキ氏は、海兵隊の沖縄駐留を正当化する抑止力論について批判的な検証を行う。そのうえで東アジア地域の安全保障環境を念頭に置きながら、海兵隊の役割、普天間基地問題解決策を提起する。
 以上、4氏の論考をふまえて、私が司会を担当し、座談会を行った。座談会では各氏が上記論点を出し合いつつ、沖縄基地問題を軸に、抑止力、集団的自衛権について議論を行った。なお、年末に予定されている沖縄県知事選挙が、沖縄基地問題についての大きな分かれ目となることを見据えて議論は進められた。
 最後に、ワシントンにも在住し、外交・政治問題に関して米議会などで自らロビーイングを行ってきた経験を踏まえ、私から、日本外交の問題点、外交にさまざまな声を反映させる可能性と方法について、新外交イニシアティブのこの間の取り組みを紹介しながら報告する。 

猿田佐世(新外交イニシアティブ事務局長・弁護士)

主な目次

普天間基地問題にどう向き合うか—元防衛官僚の視点から 柳澤協二
「名護に行こう」という決断/名護市の危機は日本の民主主義の危機/名護市長選挙と今後の展望/米国のアジア回帰と沖縄海兵隊の抑止力/だれが基地の所在を決めるのか?

海兵隊沖縄駐留と安全保障神話—沖縄基地問題の解決にむけて 屋良朝博
海兵隊は本土から来た/米国の視点/日本の安保神話/海兵隊の実際の役割と機能/夢見るリアリスト/海兵隊撤退への道すじ/まずは「お金」/二枚目のカードは高速輸送船/ファクトにそくして日米同盟の再点検を

日米の盲目的な主従関係が招く沖縄支配 半田 滋
日米安保条約を踏み越えた米軍再編/米軍を守る沖縄の自衛隊/負担増反対の市長を追い落とす防衛省/「日本」を差し出した安倍首相/尖閣のため沖縄を切り捨てる

抑止力と在沖米海兵隊—その批判的検証 マイク・モチヅキ
抑止力の概念とその限界/日本の安全保障専門家による抑止力の応用/安全保障のシナリオと海兵隊の役割/最後に—沖縄基地問題解決の方途

【座談会】沖縄基地問題の分水嶺—抑止力・集団的自衛権・県知事選
柳澤協二┼マイク・モチヅキ┼半田 滋┼屋良朝博┼猿田佐世
沖縄にいない海兵隊/抑止力論の問題点/平時と有事をわけた日米同盟の運用と抑止力論/海兵隊グアム移転と自衛隊の位置/オーストラリアの新基地の位置づけ/米国のアジア太平洋構想に沖縄問題の解決を組み込む/米国国内の海兵隊削減論と沖縄/海兵隊再編をめぐる二つの動向/集団的自衛権との関係/これから求められる具体的な日米協力/沖縄認識の現状

豊かな外交チャンネルの構築を目指して—新外交イニシアティブの取り組み 猿田佐世

資料 普天間基地移設問題の経過

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