がん患者3万人と向き合った医師が語る 正直ながんのはなし (賢く生きるために知っておきたい放射線の光と影)

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西尾正道

四六判並製/192頁
定価 本体1,400円+税
発行日 2014年8月 7日
ISBN 9784845113576 C2047

人はなぜ“がん”になるのか 「放置すればがんは治る」なんてことはありません。 最善のがん治療を選択し賢く生きるには 「原子力ムラ」と「医療ムラ」にだまされないための知識を!

著者紹介

西尾正道(にしお・まさみち)
北海道がんセンター名誉院長、北海道医薬専門学校学校長、厚生労働省北海道厚生局臨床研修審査専門官。1974年札幌医科大学卒業後、国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科勤務。88年同科医長。2004年独立行政法人国立病院機構・北海道がんセンター放射線診療部長。08年院長となり13年3月定年退職。がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。
著書に『がん医療と放射線治療』(エム・イー振興協会)、『がんの放射線治療』(日本評論社)、『放射線治療医の本音―がん患者2万人と向き合って』(NHK出版)、『今、本当に受けたいがん治療』(エム・イー振興協会)、『放射線健康障害の真実』(旬報社)、その他医学領域の専門学術著書・論文多数。

「はじめに」より

国民の二人に一人はがんになる時代。がん患者の二人に一人が治る時代

 今、男性なら約55パーセント、女性では約45パーセントと、日本人の二人に一人はがんになるという時代を迎えようとしています。世界的に見ても、熱性流行性伝染病が長らく死因の第1位でしたが、そのあとは心臓病が第1位になり、2010年に初めてがんが死因の第1位になりました。戦前は、がんで亡くなる人は、わずか2~3パーセントぐらいでしたが、現在は、30パーセント以上ががんで亡くなる時代になっています。
 今後、がん患者はますます増えていくことが予測されています。その大きな要因として高齢者の増加が指摘されています。がんというのは、遺伝子の傷が原因となって起こる疾患なので、長く生きれば生きるほど遺伝子に傷がつくリスクが高くなるからです。しかし、単純に高齢者が増えたからということでは、現在のがん罹患率の上昇という現象は説明がつきません。そこで考えられる原因は二つあります。
 一つは、戦後の高度経済成長の過程で生じた生態系の破壊です。農薬、食品添加物などの種々の化学物質、核実験や原子力発電によって拡散した放射性物質などが関与して人間の生態系を破壊し、最終的にがんの罹患者数の増加につながっていると考えられます。
 もう一つは、がんの患者さんの若年化も罹患者数の増加をもたらしています。私が40年前に医者になったころ、子宮頸がんの患者は50代、60代の女性が中心でした。今は、30代が子宮頸がんのピークになっています。がんになる時期が若年化しているのです。
 直腸がんも同様で、私が学生時代には、直腸がんは60歳以上の男性の病気だと教わりましたが、今は40代でも直腸がんになる人が珍しくありません。こうした若年化が関与して、全体としてがんの患者さんが増えているということだと思います。
 では、がんになる人が増える時代に、それに対する医療はどうなっているのでしょうか。40年前はがん患者さん全体の5年生存率は43パーセントでしたが、今は53パーセントになっています。約10パーセント上がっています。その最大の要因は早期発見によるものです。そして、できるかぎり身体に傷をつけずに行なう低侵襲な治療法も開発されました。たとえば、胃粘膜の上皮にとどまっているようながんが見つかった場合、内視鏡を用いた胃粘膜切除術で終わってしまいます。このように胃がんが早期に見つかった人は99パーセントが5年生存するわけですから、全体として生存率は向上しています。そういう意味では、がんは早期に見つけて治療すれば治る時代になったともいえます。
 こういう時代ですから、がんに対してどう向き合っていくかということは、これからの日本人にとって非常に大きな課題になっていくでしょう。
 しかも、がんという病は、ある程度進行した場合は、治るかどうかは“オンリー・ワン・チャンス”と言っても過言ではありません。たとえば、糖尿病になった場合を考えてみましょう。専門家でもなければ、普通は、まず食事療法や運動療法をやり、経口の糖尿病薬を使い、それでだめならインスリンの注射をするというような段階を経て、やっと糖尿病がコントロールできるようになります。その間、ずいぶん時間がかかるかもしれませんが、コントロールはできます。専門家でないとコントロールできるまでに遠回りするだけです。
 ところが、がん治療の場合は、一回目の適切な治療で完全に治してしまわなければ、命を落とすことになります。適切でない治療の結果、再発や転移をしてしまったら、治すのは非常に難しいので一回目の適切な治療が大事なのです。
 もちろん、再発や転移をしても治る人はいますが、それは確率的には非常に少ないし、治療も難しいのです。ですから、がん治療においては、完全に治しきるチャンスはオンリー・ワン・チャンスに近い。がんは、「最初から専門医に診てもらいなさい」というのは、そういう理由があるからなのです。
 国もこのようながんという病気の特殊性を考慮して、がん診療連携拠点病院を指定して対策を進めています。
 ところが、一方で、国民のがん医療、さらに医療全般に対する不安と不信も広がっているように思います。その一つの表れが、昨年、近藤誠医師の『医者に殺されない47の心得―医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法』(2013年刊、アスコム)という本が多くの国民に読まれ、話題となったことです。近藤医師は、①日本は無駄な外科手術をしている、②抗がん剤は効かない、③がん検診は意味がない、④本当のがんは発見されたときは手遅れで、〝がんもどき〟のがんは治療する必要がない、だからがんは放置しておけと「がん放置療法」のような無責任な極論を述べています。その後も、近藤医師は、同じ主張を展開する書籍を数多く出版しています。では、なぜそれらの書籍を多くの国民が読むのでしょうか、その社会的背景は何なのでしょうか。私は、理由のひとつに医療不信があると思っています。
 本書では、がんと医療の問題を考える一つのきっかけとして、近藤医師の主張の誤りを指摘しながら、がんという病とはどのようなものか、現在、どのような治療が行なわれているのか、国民に不安と不信を抱かせる日本の医療の問題点は何か、を考えていきます。そのうえで、私の専門である放射線によるがん治療の優れている点を紹介し、さらに、現在政府が進めているTPPがもたらす医療や国民の健康への重大な影響を検討し、今後のがん医療の在り方を考えていきます。そして最後に、東京電力福島第一原発事故がもたらす放射線健康障害を医学の面から明らかにし、今後の原発事故対策や放射線に対する向き合い方について、市民の皆さんに知っていただきたいことについて語りたいと思います。

主な目次

はじめに―国民の二人に一人はがんになる時代。がん患者の二人に一人が治る時代

第1章 もっと「がん」を理解しよう
1 がんのナチュナルヒストリーを知る
2 がん発生の仕組みとがんの進行度
3 がんの進行度によって異なる治療法

第2章 がん患者が不安になる理由
1 なぜ患者と家族は今の医療に不信を抱くのか
2 がん検診は有用です
3 「がんもどき理論」って何だろう
4 適時発見・適切治療のすすめ
5 抗がん剤が「効く」ということの意味
6 治療結果の格差はどうして生じるのか
7 医学界の体質と医学教育の問題
8 がん治療におけるQOLとQOT

第3章 放射線治療を知っていますか
1 医療費と医療体制の国際比較
2 がんという疾患の説明とがんの進行度
3 最近のがんの診断と治療法の進歩
4 放射線の基礎知識
5 放射線感受性と副作用
6 放射線照射技術の進歩
7 部位ごとのがんの放射線治療について
8 放射線はがんの緩和医療にも有効です
9 これからのがん医療の問題

第4章 高齢化時代のがん治療にどう対応するのか
1 「がん対策推進基本計画」の内容と課題
2 放射線治療の進歩と標準的治療
3 「がん診療連携拠点病院」の放射線治療の現状
4 予想される放射線治療の需要増加

第5章 患者会とセカンドオピニオン 
1 大きくなる患者(患者会)の役割 
2 セカンドオピニオンと患者の会
3 「市民のためのがん治療の会」が目指すもの

第6章 TPPは健康にも影響を与える
1 TPPで日本の医療はどうなるのか
2 TPPにより流入する食物の安全問題

第7章 原発事故による放射線被ばくを考える
1 低線量被ばくがもたらす健康被害を知ろう
2 チェルノブイリ児との比較で考える
3 ICRPの役割は何か
4 原発作業員の被ばくを考える
5 地域住民の健康管理はどうなっているのか
6 甲状腺がんの問題を考える
7 内部被ばくの影響を知ろう
8 鼻血論争について
9 深刻な土壌汚染と海洋汚染
10 今後の事故対策はどうあるべきか

あとがき―賢く生きよう

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