感情労働としての介護労働 (介護サービス従事者の感情コントロール技術と精神的支援の方法)

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吉田輝美

A5判上製/240頁
定価 本体5,000円+税
発行日 2014年8月26日
ISBN 9784845113613 C3036

介護サービス従事者がストレスを乗り越え、利用者が満足できるサービスを提供するにはどうすればよいか。感情コントロールの方法、上司や同僚によるサポート体制など、精神面・技術面からの対策を示す。

著者紹介

吉田輝美 (よしだ・てるみ)
昭和女子大学人間社会学部福祉社会学科准教授。
日本福祉大学卒業後、公立の養護老人ホームの介護員を経て、生活相談員となる。ケアする人のケアを専門領域として介護現場の研修を展開。九州保健福祉大学で博士号(社会福祉学)取得。仙台白百合女子大学, 静岡福祉大学を経て現職。仙台白百合女子大学在職中に、ケアマネジャーや成年後見人の業務も行う。社会福祉士, 介護福祉士、介護支援専門員、認知症ケア専門士。 
主な著書に 『シリーズ介護施設安全・安心ハンドブック第4巻人材育成と労務管理』(ぎょうせい、2011年)、 『介護従事者のための応対接遇ガイド』(ぎょうせい、2012年)、『世界の社会福祉年鑑 第13集』(旬報社、 2013年)などがある。

「はじめに」より

 本書は、いままで介護労働の分野ではタブー視されてきた, 労働者の「感情」の問題に焦点を当てている。
 介護サービスの利用者やその家族から発せられる言葉, それがたとえみずからの心を傷つけるような言葉であっても、介護労働者はぐっと堪え、自分が傷ついていることを悟られないように振る舞い、常に利用者やその家族が満足できるようなサービスを提供しようと努力している。 
 以前から筆者は, 介護労働者のそうした行為は「感情労働」と呼ぶに相応しいものだと考え, そのことを研究のなかで立証したいと強く思い続けてきた。約15年に及ぶその思いが, 全国の介護サービス従事者の方がたのご協力によってようやく実現できたことに, まずは心より感謝申し上げたい。
 本書は序章・終章を含め, 7章で構成されている。まず序章では, “あるべき介護労働者像”の重圧に苦悩する労働者たちが, 具体的にどういう問題を抱えながら仕事をしているのかを概観した。次に第1章では, わが国で早い時期から「感情労働」に着目し, それを看護労働の分野で取り上げた武井麻子氏の先行研究を紹介するなかで, 介護労働との接点を明らかにした。そして第2章では、特別養護老人ホームをフィールドに、介護労働者が利用者やその家族とのかかわりによって感じる「傷つき」の実態と、それを乗り越えるために実行している対処法をさぐった。また第3章では, 「感情労働」を実践する手段の一つとしてコミュニケーション能力に着目し, 介護サービス従事者に起こるストレスをどのように軽減していけばよいかを考えてみた。さらに第4章では, 在宅サービスの要とされるケアマネジャーに焦点を当て, 第2章と同様に, サービス利用者とその家族による「傷つき」の実態とその対処法をさぐった。続いて第5章では, ケアマネジャーの支援システムである主任ケアマネジャーの役割, スーパーバイザーへの育成課題を, 現場の実態調査をもとに明らかにした。そして終章では,介護サービス従事者が「感情労働」を実践していくために必要な知識や技術, 組織による支援体制の整備について検討した。
 介護サービスにおける人材不足が問題になって久しいが, 遅々として改善が進まないのは, 賃金の低さや職務に対する社会的評価の低さだけが原因ではないだろう。介護士やケアマネジャーは, 辞めても代わりはいくらでもいると考える管理者がいるとすれば, それは大きな誤りである。職員として大切にされているという実感がなければ、離職率の高止まりや人材難はいつまで経っても解決しないだろう。こういう状況だからこそ, 組織が介護従事者を守り, 育成していくという視点に立って, 働きやすい環境づくりを進めていく必要がある。
 福祉は人がつくり, 人で成り立っている。このことを忘れたら, 福祉は単なる金儲けの具に成り下がってしまうだろう。
この本を書き終えて一つ心残りだったのは, 組織の管理者が一人ひとりの介護従事者とどのように向き合っているのか, 突っ込んだ調査・分析が及ばなかったことである。この点については, 今後の課題としたい。
 日本中の介護サービス従事者が日々何を感じ, みずからの職務を遂行するためにどのように悩み, 努力しているのかを, 少しでも多くの読者に知っていただきたい。本書がその一助となれば幸いである。

主な目次

序 章 介護労働者が抱える問題
 1 介護労働の現状
 2 介護労働者と介護倫理
 3 介護労働と感情コントロール
 4 介護労働とコミュニケーション
第1章 感情労働としての介護労働——武井麻子による感情労働の解釈を通して
 はじめに
 1 感情労働とは何か
 2 武井麻子の看護師観
 3 武井麻子がとらえる感情労働
 4 看護労働が介護労働に与える影響
 5 看護労働の社会的評価を高めるために
第2章 介護労働者にみる「傷つき」・ストレス——特別養護老人ホームでの調査から
 第1節 利用者やその家族からの言葉による傷つきには
     どのようなものがあるか
 1 介護労働者の感情労働
 2 介護労働者の「傷つき」実態調査
 3 介護労働者の「傷つき」とストレス
 第2節 言葉による傷つきやストレスにどう対処するか
 1 労働の継続を可能にする力とは
 2 介護労働者の行動特性調査
 3 感情労働のサバイバーたち
 4 介護労働を可能にする力
第3章 コミュニケーション能力と介護サービス従事者のストレス軽減
第1節 コミュニケーション能力評価尺度調査から明らかになったこと
 1 介護労働におけるコミュニケーションとは
 2 介護労働者のコミュニケーション能力と測定方法
 3 平均値との比較、年齢・経験年数との関係
 4 介護労働者に必要なコミュニケーション能力とは
 第2節 ストレス軽減のための認知療法の活用
 1 セルフセラピーとしてのストレス対処法
 2 ストレス軽減のための3つの技法
 3 認知行動療法を通じて明らかになったこと
 4 自分を大切にする方法
第4章 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーにみるストレスとその対処法
 第1節 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーの現状
 1 介護保険制度の成立と介護サービスのマネジメント化
 2 地域包括支援センターの創設と主任ケアマネジャーの配置
 3 主任ケアマネジャー研修の変遷
 4 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーのストレス研究
 第2節 ケアマネジャー業務にみる「傷つき」・ストレス
      ——ケアマネジャーと主任ケアマナジャーの調査から 
 1 ケアマネジャーと感情労働
 2 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーの「傷つき」・ストレス度調査
 3 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーにみる「傷つき」の実態
 4 調査から明らかになったこと
第5章 ケアマネジャーと主任ケアマネジャーの精神的ストレス軽減のための支援体制
 第1節 居宅介護支援事業所における支援体制
 1 居宅介護事業所で起こる精神的ストレス
 2 精神的ストレス対処行動特性調査
 3 居宅介護事業所の支援関係
 4 ケアマネジャーと事業所とを支援する環境
 第2節 ケアマネジャーとスーパービジョン
 1 スーパービジョン関係に着目したアンケート調査
 2 スーパービジョンの実態
 3 スーパービジョン関係の構築に向けて
 4 スーパービジョンの効果
 第3節 主任ケアマネジャーへのインタビューによる支援体制の実情
 1 主任ケアマネジャーの関係性についての実態調査
 2 主任ケアマネジャーが語る本音
 3 スーパーバイザーとしての役割をどう担うか
 4 主任ケアマネジャーのあり方と今後の課題
終 章 感情労働の実践者
1 感情労働としての介護労働
2 感情労働とケアマネジャー
3 感情労働とコミュニケーション能力
4 ミス・コミュニケーションへの取り組み
5 感情コントロールの技術
6 感情労働と介護労働者の精神的支援
7 介護労働者を守るための感情労働
8 介護労働の社会的地位の向上のために
9 これからの介護労働に求められるもの

『感情労働としての介護労働』が朝日新聞(11/2)書評欄に紹介されました。
詳細はこちらから朝日新聞記事(PDF:969KB)

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