日本が“核のゴミ捨て場”になる日 (震災がれき問題の実像)

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沢田 嵐

四六並製/244頁
定価 本体1,600円+税
発行日 2015年5月25日
ISBN 9784845114108 C0036

消えた震災がれきの謎
なぜ「広域処理」が必要とされたのか_。
被災地ないがしろの復興交付金目当ての地方自治体、バラまきにむらがる企業、そして底流で進む放射性物質の大幅な規制緩和……。〝核のゴミ〞が普通のゴミ処理場で処分されるようになる!?

著者紹介

沢田 嵐(さわだ・あらし)
ブログ「あざらしサラダ」管理人、高知市出身。東日本大震災以降、食の放射能汚染に危機感を持ち、東海地方を中心とする市民団体のネットワーク「未来につなげる・東海ネット」が名古屋市内に立ち上げた「市民放射能測定セ ンター」(通称:Cラボ)発足時からの測定ボランティアスタッフとして、2年半にわたり食品や土壌などの放射能測定を実施。原発事故後は汚染の拡散に繋がりかねない放射性廃棄物問題についてブログで情報の整理と発信をつづけ、「震災がれき広域処理」のテーマで約200本の記事をエントリーするとともに、全国11個所で市民勉強会を開催するなど精力的に住民運動を展開。

「はじめに」より

 いま原発事故後の法律制定や制度の改訂などにより、日本列島の各地が「核のゴミ捨て場」になる可能性が膨らんでいる__。

 本書は「震災がれきの広域処理」をめぐって起きた各地の反対運動を通じて、日本列島の全域が「核のゴミ捨て場」になる可能性を明らかにすることに大きな目的がある。
 東日本大震災から一年余りが過ぎた2012年春、日本では「みんなの力でがれき処理」という大キャンペーンが繰り広げられた。
 その一例として、同年3月6日の朝日新聞朝刊を掲げてみよう。見開きの両面広告は、がれきで埋め尽くされている。まさに「がれきの山」である。
 これは環境省が所管する広報業務の一環だった。この新聞広告が載った2011年度、政府はがれき処理の広報業務を大手広告代理店に業務委託し、約九億円を支払っている。両面広告が載った時点では、「がれきが多すぎて現地で処理できない。全国各地で処理を引き受けてほしい」と政府は大キャンペーンを張ったのである。
 そのわずか2ヵ月後、事態は急転回した。
 がれきの総量が大幅に下方修正され、大量にあったはずの震災がれきが「もうない」とされたのである。そして宮城県は新たな広域処理は不要と発表した。
 当初、がれきの現地処理には20年近くかかる、と言われた。だから絶対に広域処理が必要だ、と言われていた。それがあっという間に収束し、広域処理の必要性は消し飛んでしまったのだ。
 なぜ、こんなことが起きたのか。

 筆者が住んでいた愛知県では、市民運動などまったく未経験の住民たちが「震災がれきの広域処理」に疑問を抱き、各地で活動をつづけた。やがて住民たちは、情報ネットワークでつながり、お互いに情報を交換しながら、運動は列島各地にも広がっていく。そのなかで、政府・環境省がいったい何をやろうとしているのかが、じわじわと見えてきたのである。

 東日本大震災から4年が経過した。
 2万人強の人が津波にのまれて犠牲になったばかりでなく、日本を根底からひっくり返すような事態が相次いだ。とりわけ、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、すさまじい影響を引き起こし、今も「原子力緊急事態宣言」が発令されたままであり、万単位の人びとに避難生活を強いている。
 同時に、原発から遠く離れた土地に住む人びとにも「日本や日々の暮らしはこのままでいいのか」を問うた。
 「震災がれきの広域処理」も、その一つだ。
 がれき処理をめぐっては、各地で住民たちが疑問を抱き、行政や政治に疑問や異議を唱えた。実際に声を上げたり、行動したりした。
 本書では、愛知県を中心に、そうした住民たちの記録と、さらにいくつかの地域からも実情と経験を報告してもらった。それと同時に、先述したとおり、本書では「放射性廃棄物がこの先、全国にばらまかれるかもしれない」という点も取り上げた。
 なぜ、そんなことが起きようとしているのか。「国策」という強大なものに押しつぶされそうになったとき、普通の住民はいったいどうすればいいのか。それらを考える手がかりに、と筆者は考えている。

主な目次

はじめに
 「事件」は琵琶湖で起きた
 「事件」や「震災がれき広域処理」の底流で
 愛知県、半年で受け入れ断念
 環境省のプロパガンダ
 がれき総量の見直し以後

第1章「震災がれき広域処理」とは
 川崎市、十分な検討もなく受け入れ表明
 愛知県も「受け入れ」表明
 二〇一一年七月、愛知県で運動始まる
 「未来につなげる・東海ネット」結成
 市民放射能測定センター(Cラボ)も立ち上がる
 地方議員との面談が始まる
 国会議員に会う 要望は国政に届くか

第2章 「広域処理」という名の公共事業
 災害廃棄物の広域処理、開始迫る
 廃棄物の受け入れ調査、全国で「強引」に
 愛知県では反発さらに
 住民の力、「受け入れ」にブレーキ
 家庭ゴミの処理場でがれきを処理するとどうなる
 複合汚染された震災がれき
 ほんとうの狙いは「がれきのリサイクル」
 広域処理を予算から見たら

第3章 広域処理の必要性を検証する
 政府の「要請」、さらに強まる
 愛知県のがれき受け入れ計画とは
 「総量」の見直し問題で揺れる
 処理が必要な「総量」はいったいどれくらい?
 破綻した広域処理の必要性
 愛知県の東三河地域、「広域処理より、物的・人的支援を」
 「受け入れノー」へ向け、愛知県で再び住民活動活発に
 愛知県議会で「がれき処理予算」を審議
 環境省、なおも「広域処理」実現に動く
 愛知県、ついに広域処理計画を断念
 ひと区切り付いて、住民たちは

がれき広域処理の本質的な問題 池田こみち

第4章 〝絆〞の陰で流用される復興予算
 被災地がほんとうに望んでいたもの
 復興予算の流用が明らかに
 自治体による受け入れ、強行の狙いは
 高岡市ががれき受け入れを強行した経緯
 新潟県五市の不可解ながれき受け入れ決定
 広域処理は環境省の予算消化が目的
 震災復興特別交付税も被災地「以外」に九割を使用
 会計検査院が環境省の広域処理に「ダメ出し」
 岩手県がれき処理事業費住民訴訟
 愛知県にがれき受け入れ検討経費を交付
 がれき受け入れ検討経費を交付するため省令を改正
 結局、「がれき」の話は「お金」に行き着く

第5章 震災がれきから「核のゴミ」の全国処理へ
 放射性廃棄物のすそ切り
 福島県田村市における除染廃棄物不法投棄問題
 福島県鮫川村における実証実験用仮設焼却炉問題
 震災がれきから「核のゴミ」の全国処理へ

 市民として当たり前のことを求めて 大関ゆかり
 環境省と〝特別な絆〞で利を得た富山県 宮崎さゆり
 手探りで始めた私たちの反対運動 永田雅信
 浮上したのは「民主主義の機能不全」 石川和広
 二つの〝震災がれき〞訴訟 本多真紀子
 東北から九州に運ばれた震災がれき 脇義重

本書は、(何でもかんでも「東京」を中心に考え、行動してしまう)人びととは正反対の位置に立つ人びとの行動記録である。簡単には引き下がらないという意味で、執念の記録と言い換えてもよい。何かに疑問を持ち、考え、調べ、人に会い、議論し、また疑問に立ち返り、といった行動を繰り返す。それらを積み重ねた先に見えてくるのは、社会に広く喧伝されてきた内容とは大きく異なっている。中央からシャワーのように降り注ぐ情報の中で、疑問を捨てきれず、つねに動きつづけた。だからこそ、専門家や権威の脆さを原発事故で十分に学び、怪しさすらも感じる市民にとって、本書は十分に役立ち、読み応えも備えていると思う。……高田昌幸(ジャーナリスト)

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