ぼくはプロ・ナチュラリスト
「自然へのとびら」をひらく仕事
プロ・ナチュラリスト。1961年、東京都出身。日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員など、さまざまな立場で自然解説活動を展開した後、プロ・ナチュラリストとして国内外で活躍を続けている。「都市動物たちの事件簿」(NTT出版)「カラスはえらい」(光文社)「ぼくらはみんな生きている」(講談社・読書感想文課題図書)など著書多数。NHKEテレの子ども向け自然番組「モリゾーとキッコロ 森へ行こう」のナビゲーターとしてもおなじみ。
ぼくの職業は、プロ・ナチュラリスト。
わかりやすく言えば、プロフェッショナルの自然案内人です。
毎日のように、いろいろな場所で、いろいろな人々に、いろいろな方法を使って、自然のすばらしさを伝え続けています。
みなさんの中には、林や草はらにいることが楽しく、野鳥や昆虫などの生き物が好きな人もいるでしょう。また、逆に、どちらかというと室内いることのほうが多く、生き物が少し苦手の人もいるかもしれません。
でも、みな、自然の大切さは知っていると思います。
ぼくたち人間も、自然の一部です。まわりに、きれいな空気を作ってくれる森や、たくさんの食べ物を与えてくれる海などがなくては生きていけません。この、だれもが好きとは言えないけれど、だれもがないと困るとわかっているものを、いっしょうけんめいに調べ、全力で説明することがぼくの仕事なのです。
みなさんは、自然のある場所というと、まずどのようなところを思いうかべるでしょうか。家から遠くはなれた高い山や、深い森でしょうか。もしかしたら、アマゾンのジャングルかもしれません。たしかにそのようなところには、豊かな自然があります。けれども、じつは、ぼくたちの多くが住んでいる街の中などでも、いろいろな自然物を観察することができるのです。
夕暮れどきに、ビルの谷間を飛び回るアブラコウモリ。
コンクリートでおおわれた川でくらすカルガモ。
道路のアスファルトのすき間からのびたエノコログサ。
それは、ささやかな自然で、多くの人は、見過ごしてしまうかもしれません。しかし、見れば見るほど、知れば知るほど、そのささやかな自然のすばらしさにおどろかされるはずです。ぼくは、それも、アマゾンのジャングルにも負けないぐらい魅力的な自然だと思います。
ぼくは、自然はじつはこの世のどこにでもあるのだということと、どこの自然にもそれぞれのすばらしさがあるのだということを、みなさんに感じていただきたいのです。
ぼくは、ほぼ一年中、そして、ほぼ一日中、野外にいます。とても暑いときや、すごく寒いときや、かなり眠たいときや、ゆっくりごはんが食べられないときもあります。でも、ぼくは、それらのことが、ほとんど気になりません。なぜなら、自分が一番好きなことを仕事にすることができたからです。
みなさんの好きなものはなんですか。
大人になったらどんな仕事がしたいですか。
自然にかかわる仕事についている人の多くは、人気のある場所や、目立つ自然物を相手に活動をしているようです。たしかに、富士山などの美しいすがたや、ライオンやアフリカゾウなどを見れば、多くの人はかん声をあげます。
でも、ぼくは、仕事として、あらゆる場所の、あらゆる自然物のすばらしさを伝える道を選びました。そして、この道を選んだ人は、ぼくの前には、ほとんどいませんでした。つまり、このように生きていきたいと願い、自分で、ほぼ一からきずき上げてきた仕事なのです。
ぼくは、仕事とは、選ぶだけでなく、生み出せるものだと思います。もしみなさんが、やりたい仕事が世の中に見つからなければ、自分で新しい仕事を生み出せばよいのです。
なにかが好きでたまらない。その気持ちさえあれば、きっと夢はかなうと、ぼくは信じています。
2 歩んできた道
3 自然観察会へ、ようこそ
4 プロ・ナチュラリストになるには