地域から変える
地域で働き、暮らす人々の生活改善にとって何が必要か!
「結束を強める」、「力を高める」、そして「社会を変える」という一筋の道を提起する。
~「静かな革命」を続ける7つの地域協議会の調査から見えてきたもの~
「強化された結束」、「高められた力」が「社会を地域から変える活動」で発揮されれば、地域から社会を変える展望が見えてくる。連合が目指す「働くことを軸とする安心社会―まもる・つなぐ・創り出す」を地域から築き上げていくという展望である。地方連合会、地域協議会は日本社会を地域から変えていく重要な担い手の一つになり得る。(第1章より)
【はしがき】
2冊目である。地域労働運動への期待を込めて書ききった。
『地域を繋ぐ』では地域協議会をめぐる「静かな革命」の経緯とその果実を書き記した。「地域労働運動にこんなにも重要で、興味深い変化が起こっていることを知っている研究者はいないだろうなあ」と、やや得意げに、少し興奮しながら書いたことを覚えている。だが、生まれ変わったばかりの、しかもわずか10の地域協議会を調べただけである。今後、どちらの方向に向かっていくのかも、いや順調に発展していくのかも、したがって「静かな革命」が成功するのかもわからないままであった。
連合総合生活開発研究所に地方組織調査の企画を持ち込んだのは、地域協議会の整備が一段落し、数年、経過した現在、どのようになっているのか、その全体像を知りたいという思いからであった。5つの地方連合会、11の地域協議会を訪問し、いろいろと尋ねた後に、質問票の設計に取り掛かった。そして、47の地方連合会、281の地域協議会のすべてを対象とする郵送調査を実施した。
この調査でわかったことは、全体的に充実した活動を展開している地方連合会とは対照的な、活動面でバラツキの大きい地域協議会の姿であった。「革命」は順調には進んでいない。「革命」の目標は、地域で働き、暮らす人々の生活改善に少しでも貢献することである。この目標が忘れられているわけではあるまい。ただ、目標に向かってどの道を歩んでいけばよいのかが、組織によって、人によって違っているのであろう。せっかく、人と資金を注いでいるのに、バラバラの道を歩んでいる。それでいいのだろうか。目標にきちんと向かっているという意味で「有効」で、できるだけ短い距離という意味で「効率的」な道を歩んでいるのだろうか。
一つの道を仮説的に描いてみたい。私はそう思った。もちろん、私は運動の外にいる、一介の研究者にすぎない。だが、外にいるからこそ見える「良い道」もある。すべての地域協議会の財政、組織、活動を調べた観察結果はある。それだけでは足りない。質問票調査の個票から積極的な活動を行っていると見られる地域協議会を選び、訪問調査を実施することを計画した。まずは16の地域協議会をピックアップし、その中から12地協に調査を依頼した。だが、さまざまな事情があって、実際に調査ができたのは7地協にとどまった。
データは揃った。後は「良い道」を一つ描くだけである。これが難しかった。ようやく考え出したのが「結束を強める」、「力を高める」、そして「社会を変える」という一筋の道であった。これが唯一最善の道であると言い張るつもりはまったくない。だが、運動にかかわる人たちが自分たちなりの「良い道」をみんなで探し出すきっかけになればという気持ちで、この道を一例として提示したにすぎない。
地方連合会、地域協議会は地域から社会を変えていく力を持っていると私は心の底から思っている。この本が、みなさんの考えや行動を少しでも刺激できたら幸いである。
第Ⅰ部 分析編
第1章 地域で顔を見せる運動と「静かな革命」
1 地域協議会の強化
2 地域を繋ぐ
3 地協に期待する機能
4 新たな調査
5 新たな方向性――地域から社会を変える
第2章 結束を強める
1 はじめに
2 地方連合会との連携
3 幹事会メンバー
4 加盟組織
5 組合員
6 まとめ
第3章 力を高める
1 はじめに
2 首長と議員
3 自治体
4 使用者団体
5 まとめ
第4章 地域から変える
1 はじめに
2 労働相談、生活相談と組織拡大
3 街頭宣伝行動
4 政策制度要請
5 まとめ
第5章 地域労働運動の可能性
第Ⅱ部 事例調査編
第1章 鶴岡田川地域協議会
第2章 外房地域協議会
第3章 中濃地域協議会
第4章 尾張中地域協議会
第5章 津地域協議会
第6章 福山地域協議会
第7章 京築田川地域協議会