働く社会の変容と生活保障の法
島田陽一先生古稀記念論集
雇用社会の変容期であるいま、「日本型雇用慣行」を前提とする働き方を変革しなければ解決できない課題が山積している。
これまでの法制度や税・社会保障・年金制度の変革が求められ、労働法学についても根本的な見直しが迫られるなか、どのような就業・雇用形態を選択しても、生活が保障されるセーフティネットの構築と、差別されない社会制度をめざすべきであり、「就業者の生活保障の法」を構築することが必要である。
現在の労働法・社会保障法の理論的または政策的課題を多面的に検討する論集。
◉島田陽一(しまだ・よういち)
早稲田大学法学学術院教授・法務研究科教授・弁護士。1975年早稲田大学法学部卒業。1983年早稲田大学大学院法学研究科博士課程(後期)単位修得。1983年小樽商科大学講師、1984年同大学助教授、1994年同大学教授、1996年早稲田大学法学部助教授、1997年同大学法学部教授、2004年現職。2011年日本労働法学会代表理事、2010年中央労働委員会公益委員、2018年弁護士法人早稲田大学リーガルクリニック所長、2006年第二東京弁護士会弁護士登録。
〇おもな目次
序 章 生活保障法の理論的課題
第Ⅰ部 これからの労働法学・社会保障法学の課題
第Ⅱ部 就業形態の多様化と就業者の権利
第Ⅲ部 新たな生活保障をめぐる課題
第Ⅳ部 働き方改革とワーク・ライフ・バランスの実現
刊行にあたって
序 章 生活保障法の理論課題 島田陽一
1 はじめに
2 生活保障法の基礎理論
3 現行法制と生活保障法
4 むすび―生活保障法の今後の理論課題
第I部 これからの労働法学・社会保障法学の課題
第1章 変化する労働と法の役割
―デジタル技術の影響と社会課題の解決という視座― 大内伸哉
1 問題の所在
(1)定まらないギグワークの評価 21
(2)労働法の原理的射程
(3)労働法の時代的制約
(4)メタ労働法論の必要性
2 労働の目的と企業と手段性
(1)労働の原点
(2)技術と企業の手段性
(3)企業の社会的責任
(4)社会的責任と法
3 デジタル技術と法
(1)デジタル技術が引き起こす社会課題
(2)デジタル技術の手段性
4 エピローグ―労働の死?
第2章 現代労働法の新たな理論動向と日本 水町勇一郎
1 労働法の歴史と変容
2 現代労働法の理論的潮流―三つの法理論
3 欧米諸国の労働法の政策的動向―三つの方向性
4 日本の労働法の政策的展開と課題
(1)広義の「就業促進」政策
(2)広義の「差別禁止」政策
(3)法政策を推進・実現するための「手法」
(4)考察と課題
第3章 有業の低賃金・低所得層をいかなる存在として把握すべきか 林 健太郎
1 はじめに
2 有業の低賃金・低所得層に対する社会保障制度の対応
3 有業の低賃金・低所得層の置かれた状況をいかに把握すべきか
4 むすびにかえて
第4章 生活保障・憲法・社会保障法―生活保障法コンセプトの可能性― 渡邊 賢
1 はじめに
2 島田教授の提唱する 「生活保障法」
(1)「生活保障法」の提唱
(2)「生活保障法」の理念と具体的内容
(3)まとめ
3 「生活保障法」コンセプトの特徴
(1)「生活保障」 ―従前の議論との異同
(2)キャリア権論との関係
(3)能力開発施策の重視
4 「生活保障法」 コンセプトの可能性
(1)「生活保障法」 コンセプトと憲法 25 条論
(2)「生活保障法」コンセプトと社会保障法 75
5 おわりに
第5章 新しい就業と労働権論の新たな展開 有田謙司
1 はじめに
2 新しい就業の進展とそれがもたらす諸問題
3 新しい就業と労働権論の意義
4 新しい就業に対する法的保護・規制の根拠としての労働権論
5 新しい就業の諸問題と労働権論
(1)労働権と報酬
(2)労働権と契約の成立と終了・仕事の喪失・所得保障等
(3)労働権とプライヴァシー
(4)労働権と権利救済・紛争解決
6 おわりに 95
第6章 「労働の中心性」と労働法の基礎理論―メダ=シュピオ論争の端緒― 本久洋一
1 はじめに
2 シュピオ「労働、分かち合われた自由」(1993 年)
(1)労働の分かち合い(労働時間の短縮)に対する批判
(2)労働法の未来としての労働の解放
3 メダ「労働と社会政策 アラン・シュピオ『労働、分かち合われた自由』に
ついて」(1994 年)
(1)労働概念の歴史性
(2)労働の他律性
(3)「労働の解放」批判
(4)労働の分かち合いの擁護
4 おわりに
第Ⅱ部 就業形態の多様化と就業者の権利
第1章 パート・有期の格差是正法理と組織的公正―判例法理の理論化をめぐる一考察― 大木正俊
1 はじめに
2 組織的公正研究
(1)組織的公正研究の潮流
(2)分配的公正の議論の進展
(3)(広義の)手続的公正の議論
3 労契法旧 20 条関連裁判例の動向
(1)労契法旧 20 条の制定
(2)労契法旧 20 条解釈の進展
1)最高裁の判断枠組み
2)判断枠組みの詳細 ―最高裁判決を中心に
3)裁判例の傾向
4 考察
(1)分配的公正と裁判例
1)考慮すべき要素の多様性
2)均衡以外の分配的構成
(2)手続的公正と裁判例
第2章 雇用領域における差別禁止法の理論的課題―形式的平等から実質的平等の保障へ― 黒岩容子
1 問題の所在
2 国際的にみた法理論の展開
(1)伝統的な形式的平等論の意義および限界
(2)実質的平等論の提起と議論の展開
3 日本における「平等」「差別」をめぐる議論
4 差別禁止法の現代的再構築に向けて
第3章 今後の派遣労働法制のあり方 勝亦啓文
1 はじめに
2 労働者派遣法の沿革
3 労働者派遣をめぐる論点
(1)職安法との関係
(2)派遣先の雇用責任
(3)派遣労働者の待遇改善
4 労働者派遣法制のあり方
第4章 自営的就業者の団体交渉 竹内(奥野)寿
1 はじめに
2 労組法上の労働者としての保護の可能性
(1)労組法上の労働者性についての判例等の状況
(2)プラットフォーム就業者をめぐる議論
(3)コンビニエンスストアのオーナーをめぐる議論
3 労組法上の労働者ではないとしたうえでの保護をめぐる議論
(1)中小企業等協同組合法の下での交渉
(2)憲法 28 条の勤労者としての保護の可能性
4 労働法と独禁法との関係をめぐる議論
5 むすび
第5章 ワーカーズ・コレクティブの法律問題 小山敬晴
1 はじめに
2 労働者協同組合法の概要
3 法的課題
(1)検討対象の確定
(2)検討目的
(3)労働契約締結義務の意義
(4)法における協同組合の労働の定義
(5)評価
4 結語 ―これからの研究課題
第6章 フランチャイジー(加盟者)の法的保護のあり方―労働法と競争法の交錯― 土田道夫
1 本稿の目的
2 ファミリーマート事件
(1)概説 ―フランチャイズ契約・労組法上の労働者
(2)東京都労委命令
1)フランチャイズ契約における加盟者の労組法上の労働者性判断
2)具体的判断
(3)中労委命令
1)フランチャイズ契約における加盟者の労組法上の労働者性判断
2)具体的判断
(4)分析
3 労組法・独禁法による法的保護の正当化根拠
(1)労組法(労働法)による法的保護の正当化根拠
(2)独禁法(競争法)による保護の正当化根拠
(3)加盟者の労働者性を肯定した場合の独禁法の適用
4 独禁法の規律
(1)ぎまん的顧客誘引
(2)優越的地位の濫用
1)優越的地位の濫用行為
2)優越的地位の認定
5 結語
第7章 フランチャイズ契約と労働法―フランスの最近の動向を中心に― 大山盛義
1 はじめに
(1)日本の状況
(2)本稿の目的
2 これまでの議論状況
(1)従属(subordantion)関係の存否
(2)独立労働に関する労働法上の特別な保護規定
(3)フランチャイズ契約と労働法に関する裁判例―先例としての 2002 年判決
(4)フランチャイジーに対し労働法規定の適用を認めた裁判二例
1)労働法典(旧)L.781-1 条 2 項の適用
2)労働法 L.7321-1 条適用の意義
3 2002 年以降の裁判例
(1)「使用従属」関係の存在を認めた判決 ―破毀院社会部 2012 年 1 月 18 日判
決(Soc. 18 Jan 2012, no 10-16.342.)
(2)労働法 L.7321-2 条の適用―破毀院社会部 2012年1月18日判決(Soc. 18 janv. 2012, no 10-23.921)
(3)労働法 L.7321-1 条以下に関する裁判動向
4 労使対話機関の創設(2016 年)と廃止(2018 年)
(1)労使対話機関の創設
(2)労使対話機関の廃止
5 結びに代えて
第8章 韓国の公共部門における正規職転換の取組みと日本への示唆
―公共部門における非正規労働者の雇用安定をいかに図るか― 徐 侖希
1 はじめに―本稿で扱おうとすること
2 韓国の公共部門で行われている正規職転換の取組みとその対象
3 韓国の国・地方自治体に使用される「公務員ではない勤労者」
4 期間制勤労者の使用期間の上限を規制する期間制法 4 条と国・地方自治体への適用
(1)正規職転換の対象となる公務員ではない期間制勤労者
(2)正規職転換の対象外である任期付の非正規公務員
5 終わりに―韓国での取組みと日本への示唆
(1)韓国の公共部門における正規職転換の取組み
(2)日本への示唆―公共部門における非正規労働者の雇用安定をいかに図るか
第9章 正規公務員と非正規公務員の待遇格差の違法性―会計年度任用職員を中心とした検討― 岡田俊宏
1 はじめに
2 民間労働法の議論状況と会計年度任用職員制度の概要
(1)民間労働法の議論状況
1)労契法 20 条制定以前の状況
2)労契法 20 条の制定とその後の立法および判例の状況
(2)会計年度任用職員制度の概要
1)改正地公法・改正地方自治法
2)総務省マニュアルの内容
3 不合理な待遇の相違が禁止されていること
(1)問題の所在
(2)従前の学説・裁判例
1)学説の状況
2)裁判例の状況
(3)不合理な待遇の相違を違法と解する法的根拠
1)平等取扱いの原則(地公法 13 条)
2)情勢適応の原則(地公法 14 条 1 項)
3)職務給の原則(地公法 24 条 1 項)
4)均衡の原則(地公法 24 条 2 項・4 項)
(4)小括
4 不合理な待遇の相違の救済方法
(1)問題の所在
(2)行政救済
(3)司法救済
5 おわりに
第Ⅲ部 新たな生活保障をめぐる課題
第1章 自営的就業者と労働法 細川 良
1 はじめに
2 独立自営業者およびプラットフォームワークに対する労働法の適用
(1)労働者保護法理(労働基準法令)による保護
1)労働基準法上の「労働者」の解釈について
2)立法を通じた労働者保護法理の適用
(2)労働契約法の適用
(3)労働組合法の適用
3 おわりに―独立自営業者およびプラットフォームワークの保護に関する政策の
あり方
第2章 就業者と教育訓練の権利 矢野昌浩
1 前提と視点
2 日本における職業訓練法の特徴・問題
3 フランスにおける職業訓練法の特徴・概要
(1)特徴
(2)現行法の主要な仕組み
1)継続的職業訓練の目的・種類
2)労働者の権利
3)使用者の義務・責任
(3)労働時間・賃金支払いとの関係
(4)財政・運営
1)財政
2)運営
(5)失業保障と職業訓練
1)失業保険と職業訓練
2)失業扶助
(6)職業訓練の実習生という法的地位
(7)小括
4 まとめ
第3章 就業者と所得保障の課題―就業の不安定化と曖昧化への対応― 西村 淳
1 はじめに
2 就業との関係における所得保障制度の体系と変化
3 所得保障における複合
(1)社会保険と税の複合
(2)就業と給付の複合
(3)給付と支援サービスの複合
4 就業できないことに伴う給付と就業に関係しないニーズへの給付の区分
5 おわりに
第4章 全世代型社会保障と生活保障法の課題 菊池馨実
1 はじめに
2 全世代型社会保障に向けた政策動向
(1)社会保障国民会議
(2)安心社会実現会議
(3)社会保障改革に関する有識者検討会
(4)社会保障制度改革国民会議
(5)社会保障制度改革推進会議
(6)全世代型社会保障検討会議
(7)全世代型社会保障構築会議
(8)小括
3 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正
する法律
(1) 法律の概要
(2)医療保険部会での議論
4 全世代型社会保障構築と生活保障に向けた課題
5 むすびにかえて
第5章 経済危機における雇用安定のあり方をめぐる理論的課題―雇用安定事業・雇用調整助成金を中心に― 北岡大介
1 はじめに
2 雇用安定事業の制度趣旨・目的とは
(1)制度概要
(2)雇用安定事業の制度沿革・立法時の議論
(3)雇用安定事業の拠出責任の主体
3 雇用調整助成金について
(1)雇用調整助成金の制度概要と趣旨目的
(2)雇用調整助成金の法的根拠と支給要件の概要
(3)各支給要件について
(4)支給内容(通常)
(5)雇用調整助成金の基本構造
(6)雇用調整助成金の法的性格
4 コロナ特例措置とその特徴
(1)雇用調整助成金のコロナ特例措置とは
(2)「経済上の理由」の緩和とコロナ特例
(3)コロナ特例措置における支給内容拡充・手続き簡素化
(4)コロナ特例措置の意義
(5)コロナ特例による財源的危機と当面の対応
5 今後の経済危機における雇用安定のあり方をめぐる理論的課題
(1)新たな経済危機下における持続的な雇用安定事業のあり方
(2)労働者の雇用保険料拠出および関与権拡大の可能性
(3)労働者本人への申請・受給権付与の構想と法的性格の変容可能性
第6章 日本の高年齢者雇用をめぐる法政策と今後の課題―高年法改正状況と政策プランの方向性、高年齢者雇用政策の問題点と年齢平等の視点― 元 容立
1 はじめに
2 高年齢者雇用における主要な法政策とその背景
(1)高年法における主要な法政策 362
1)60 歳以上定年の強行規定化と高年齢者雇用確保措置の努力義務
2)高年齢者雇用確保措置の義務化と例外措置・経過措置の問題
(2)65 歳まで継続雇用制度の義務化
(3)2020 年法改正(令和 2 年法律第 14 号による改正)―70 歳までの就業機会確保などの努力義務規定
3 最近の高年齢者雇用をめぐる政策プランとその方向性
(1)「ニッポン一億総活躍プラン」(2016 年 6 月 2 日閣議決定)
(2)「働き方改革実行計画」
(2017 年 3 月 28 日働き方改革実現会議決定)
(3)成長戦略実行計画(2019 年 6 月 21 日閣議決定)
(4)2020 年改正高年法とその就業機会確保措置の段階的義務化
4 裁判例に表れた高年齢者雇用の問題とその課題
(1)有期労働者に対する年齢を理由とする更新制限
(2)継続雇用制度上の再雇用における異なる職種・職務への配置
5 募集・採用における年齢制限禁止義務化規定
6 おわりに ―エイジレス社会に向けた課題
第7章 医療保険財政における前期納付金・後期支援金 加藤智章
1 問題の所在と本稿の課題
2 医療保険制度の財政状況
(1)制度別財政概要の意義
(2)医療保険制度の全体像
3 収入支出に関する財源構成
(1)介護保険 2 号被保険者に関する保険料
1)健康保険料
2)介護保険料
(2)前期調整額(前期納付金・前期交付金)
(3)後期支援金
4 前期納付金・後期支援金の法的性格
(1)介護納付金
(2)前期納付金および後期支援金
5 前期納付金・後期支援金に対する法的統制
(1)総報酬割方式について
1)負担の公平
2)要件明確性
(2)賦課の目的と負担方法の整合性
6 結びにかえて
第8章 子どもの貧困の理論的課題―子どもに関わる税制上の優遇措置を素材と
して ― 常森裕介
1 問題の所在
2 子どもの貧困の把握
(1)貧困の測定
(2)子どもの基本的ニーズ
(3)子どもと世帯
(4)子どもの貧困と生活保護基準
3 子どものニーズへの対応―子どもに関わる税制上の優遇
(1)子どものための支出
(2)子育て費用に関わる控除
1)日本の税制における子どもの位置づけ
2)アメリカにおける子育て費用税額控除と子ども税額控除
3)子どもに係る税制上の優遇措置の可能性と限界
4 多様性を包含する貧困基準
第9章 住宅保障の理論課題 片桐由喜
1 はじめに
2 『社会保障制度に関する勧告』のなかの住宅保障
(1)概観
(2)考察
3 日本の住宅政策
(1)概観 ―階層別・二面的住宅政策
(2)考察
4 私的部門における住宅保障
(1)住宅双六
(2)企業による住宅保障 413
5 まとめにかえて―住宅保障の規範化へ向けて
第 10 章 日本の最低賃金制度の最近の課題と今後の展望についての試論 森下之博
1 問題意識と検討の射程
2 最低賃金制度の変遷と最近の論点の整理
(1)最賃法の変遷
(2)最近の論点 ―政府要請の最低賃金への影響
1)最低賃金の決定方式をめぐる課題
2)最低賃金水準と政府要請との関係性
(3)最低賃金制度のあり方をめぐる最近の議論(経済学の立場から)
3 最低賃金制度のあり方についての試論
(1)最賃法の目的と政府の要請との整合性についての検討
(2)最賃法の考慮要素と水準についての検討
1)最賃法の考慮要素と政府要請の「考慮」のあり方
2)最低賃金の目指すべき水準の考え方
(3)現行の決定方式の限界についての検討
4 むすびにかえて―最低賃金制度の展望
第11章 イギリス最低賃金法の射程―泊まり勤務における睡眠時間は最低賃金の対象か― 藤井直子
1 はじめに
2 イギリス最賃法が最低賃金対象とする時間
(1)全国最低賃金規則が示す対象時間
(2)問題の所在
3 夜間泊まり勤務の不活動時間をめぐる判例動向
(1)勤務シフト全体を最低賃金対象時間とする全適用アプローチ
―Burrow Down 事件 , British Nursing Association 事件等
(2)実際の労務遂行の時間のみを最低賃金対象時間とする一部適用
アプローチ ―South Manchester 事件等
4 Mencap 事件
(1)事案の概要と経緯
(2)雇用上訴審判所判旨概要(2017 年)
(3)控訴院および最高裁判所の判旨概要
1)控訴院判旨概要(2018 年)
2)最高裁判所判旨概要(2021 年)
(4)本事案が示す法の射程とその評価
5 おわりに
第12章 「治療と仕事の両立支援」の観点から見た傷病手当金の意義と課題 浅野公貴
1 はじめに
(1)治療と仕事の両立支援をめぐる政策展開
(2)治療と仕事の両立支援をめぐる論点
2 傷病手当金の意義と課題
(1)傷病手当金の位置づけ
(2)支給期間
1)支給期間の変遷
2)支給期間に関する考察
(3)支給水準
(4)支給要件
1)労務不能
2)同一疾病
3 おわりに
(1)疾病構造の変化と傷病手当金
(2)残された課題
第IV部 働き方改革とワーク・ライフ・バランスの実現
第1章 雇用型テレワークの法と政策をめぐる国際比較 山本陽大
1 はじめに
2 テレワークの導入段階
(1)テレワークの権利?
(2)テレワークの義務?
1)平時
2)緊急時
3 テレワークの実施段階
(1)費用負担
(2)労働時間
1)労働時間管理
2)規制の柔軟化
3)「つながらない権利」について
(3)安全衛生と労災補償
1)安全衛生
2)労災補償
4 おわりに
第2章 働き方改革と兼業・副業の自由 戸谷義治
1 はじめに
2 兼業・副業規制
(1)裁判例の動向
(2)国の指針等
3 労働時間の計算
(1)ガイドラインの内容
(2)労働時間の通算は妥当か
4 健康管理と労災
(1)健康確保措置
(2)労災
(3)検討
5 その他の課題
6 おわりに
第3章 月経等による就労障害と日本法制の課題―生理休暇を中心に― 所 浩代
1 問題の所在
2 月経に関わる就労障害の実態
(1)月経と月経関連症状
(2)月経等による就労障害の実態
(3)職場への要望(当事者の声)
3 月経等による就労障害に向けた休暇制度
(1)日本
(2)諸外国
1)生理休暇を法定している場合
2)病気休暇を法定している場合
4 日本法制の課題と今後取り組むべき施策
(1)休暇
1)生理休暇
2)年次有給休暇
(2)その他の措置
(3)措置の利用と不利益取扱い
第4章 フリーランスと安全・健康確保法制についての覚書 鈴木俊晴
1 はじめに
2 災害補償について
3 安全配慮義務の存否
4 労働安全衛生法令の適用の可否
5 まとめにかえて
第5章 ハラスメントと職場環境・職場の人間関係 浅野毅彦
1 現在のハラスメント規制の課題
2 職場環境配慮義務・自由な人間関係に関する裁判例の検討
(1)職場環境配慮義務の裁判例の検討
1)セクシュアル・ハラスメントと職場環境配慮義務
2)債務不履行責任の意義
3)いじめ、パワハラと職場環境配慮義務
4)均等法等の配慮義務・措置義務と職場環境配慮義務
5)職場環境配慮義務の法的意義
(2)自由な人間関係に関する裁判例の検討
1)自由な人間関係の形成の自由が問題とされた裁判例
2)裁判例から導出される「自由な人間関係の形成の自由」とは何か
3)意義と射程
(3)職場環境、職場の人間関係とハラスメント防止措置
3 ハラスメントの要因となる職場環境、人間関係
(1)ハラスメントを生む職場環境、人間関係
(2)ハラスメントを生む職場構造とは何か
4 集団的予防的法的対応の課題
(1)職場環境改善のための法的対応
(2)措置義務の実効性の有無
1)措置義務の内容
2)措置義務がハラスメントの予防、再発防止、職場環境の改善に有効に機能しているか
(3)集団的予防的な法的対応の検討
1)ILO 条約からの示唆
2)予防のための法的対応と措置の構成
第6章 ポスト・コロナのワーク・ライフ・バランス―理念と働き方の変遷を背景に― 菅野淑子
1 はじめに―本稿の射程
2 ワーク・ライフ・バランスという理念
(1)ファミリー・フレンドリーとワーク・ライフ・バランス
(2)ワーク・ライフ・バランス実現のための要素
3 「限定正社員」と雇用形態の多様化
(1)勤務地・職種限定社員とワーク・ライフ・バランス
(2)「限定正社員」登場の経緯
(3)非正規労働者とフリーランス
4 これからのワーク・ライフ・バランス
(1)コロナ禍のもたらした影響
(2)テレワークとワーク・ライフ・バランス
5 おわりに
島田陽一先生略歴・主要業績目録